遺伝性球状赤血球症のポイント

症状イメージ

赤血球の形が球状になりもろくなる病気
●遺伝性球状赤血球症はどんな病気か
赤血球の膜を構成する蛋白質の異常により赤血球の形に異常が生じて、赤血球が壊されてしまう(溶血(ようけつ))病気 です。遺伝性溶血性疾患のなかでは最も頻度の高い疾患です。人口5~10万人に1人の頻度とされています。遺伝す る病気ですが、家族歴のない場合にもみられます。

●遺伝性球状赤血球症の原因は?
赤血球膜の骨格をなす物質(スペクトリン)の欠損が原因で、赤血球が球状(通常は楕円形)になり壊れやすくなります。 スペクトリンの欠損の程度によって病気の重症度が異なります。

●遺伝性球状赤血球症の症状は?
主要な症状は、貧血、黄疸(おうだん)、脾臓(ひぞう)の腫大です。  貧血は溶血によるもので、乳幼児期には約半数に軽度の貧血がみられますが、学童期以降は代償されて貧血を認め ないことも多いようです。  黄疸も溶血によるもので、小児の約半数にみられます。約30%は新生児期から黄疸が強く光線療法が必要です。 時に交換輸血が必要になる場合もあり、診断のきっかけになります。  脾臓の腫大は異常赤血球の停滞と崩壊によるもので、乳幼児で50%、年長児で75~90%に認められ、大きさは 数cm程度のものが多い傾向にあります。
伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)(いわゆるリンゴ病)の原因になるヒトパルボウイルスB19に感染すると、溶血が急速に 進み貧血が急激に悪化することがあり(無形性発作)、注意が必要です。  また、ウイルス感染によって脾臓の機能が亢進し溶血が盛んになり、症状が悪化することがあります。さらに、溶血の亢進 によりビリルビンが沢山つくられるためビリルビン結石の胆石が形成されやすい状態になり、10歳以下では5%、20歳を過ぎ ると50%以上が胆石を合併するようになります。

●遺伝性球状赤血球症の検査と診断は? 家族歴や赤血球の異常の有無を調べる赤血球浸透圧脆弱(しんとうあつぜいじゃく)試験および赤血球膜のスペクトリンの 低下により診断されます。近年は遺伝子解析も行われ、病気の原因や詳しい仕組みが明らかになりつつあります。

●遺伝性球状赤血球症の治療は? 新生児期の黄疸の治療には、光線療法や交換輸血が行われます。新生児期の重症貧血、感染を契機にした溶血 の亢進時や無形性発作時には輸血が必要です。しかし、頻回の輸血が必要な場合は脾臓の摘出(摘脾(てきひ))が 必要となり、これが有効な治療法になります。  脾臓は免疫能に関係するため、摘脾後は感染症の問題が生じます。乳幼児期では摘脾後に重症の細菌感染症(と くに肺炎球菌)を合併することがあるため、摘脾の時期は5歳以降がよいとされてきました。しかし、近年は肺炎球菌ワク チン接種により、2歳前後でも摘脾を行うことがとくに重症例ではすすめられています。摘脾後数年間は抗生剤の予防内 服が必要になります。

●遺伝性球状赤血球症の注意点 発熱と全身倦怠感などの感冒様症状からくる遺伝性球状赤血球症の無形成発作(白血球、赤血球、血小板全て激減する)は重症化しやすいので要注意、また 胆石の有無は予後(病気の経過)を決定する重要な因子です。摘脾を受けた場合は、重症感染症の発生が予後を決定しますが、小児期を過ぎれば発生頻度は低くなります。