急性腎炎 溶連菌感染後腎炎の診断と治療のポイント

症状イメージ

溶連菌による咽頭扁桃腺炎の後2週間で発症
頻度★
血尿が出る、むくむ、血圧が高くなる
症状は、コーヒー色の血尿が出る、体がむくむ、血圧が高くなるという3つです。
まぶたがはれたり、足がむくんで靴がはけなかったり、体がだるく食欲がなくなったりします。
乳幼児にはまれで、幼稚園から小学校の低学年にかけて、見られることが多い病気です。
感染源が抗原となって腎臓の糸球体血管の内皮細胞に沈着して抗原抗体反応や炎症を起こし、血管の内腔が狭窄(きょうさく)して血液が通りにくくなり、腎機能が低下します

腎臓にある、尿をつくるはたらきが低下します
体がむくみ血尿がでることに
この病気は、腎臓にある糸球体のはたらきが低下して起こります。
糸球体は、血液中の老廃物や余分な水分をこして尿をつくるはたらきをしているため、体がむくんだり血尿が出るなどの症状があらわれます。
病気の引きがねになるのは、溶連菌の感染。かぜが治って2~3週後に発症することが多いのです。
上まぶた、足の浮腫、肉眼的血尿、高血圧、乏尿(ぼうにょう)、全身倦怠、頭痛、食欲低下が臨床症状として重要です。
腎炎の程度が軽度であると身体所見や自覚症状に乏しく、学校検尿などで偶然に尿の異常を指摘され、診断されることがあります。
尿は血尿(肉眼的血尿から顕微鏡的血尿まで種々、赤血球円柱+)、タンパク尿(ネフローゼとなることも)がみられます。
大量のタンパク尿がみられても数日以内に減少し、1~2カ月以内には消失します。
血尿は消失するまで3~4カ月かかります。
腎炎の発症する2週間程前に咽頭炎などの先行感染がなかったかの確認が大切。

体重は10~15%程度増加、高血圧は3~8割にみられ、高血圧の程度が強いと頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害などの急性脳症(高血圧性脳症)を起こします。
乏尿は自覚症状として気づかれることは少なく、4~5日間持続します。

急性腎炎の診断
血尿、たんぱく尿、浮腫、高血圧に要注意
溶連菌感染症の結果として血清ASO、ASKは上昇します。
低タンパク血症、低アルブミン血症、BUN・クレアチニンの軽度上昇、血清補体価(CH50)の低値、C3低値、C4低値となります。
多くの場合、血清IgA(免疫グロブリンA)は正常、抗核抗体と抗DNA抗体は陰性です。
尿所見や血清補体価が次第に改善し、溶連菌感染の存在が確認し診断します。
小児では重症例を除いて腎生検がせずにすむことも。

急性腎炎の治療
急性期の高血圧と高カリウム治療が大切
急性期には入院治療をすることも浮腫には減塩、水分制限 高血圧のコントロールを血圧が正常なら日常生活はOK。
利尿期にはいり浮腫が消えたら塩分、水分制限も解除、血清補体価の改善すると退院できます。高K血症に対しては注射の利尿剤を使うことも

食事制限が大切です
塩分と蛋白を制限
大人と比べて子供の急性腎炎は、ほとんどの場合、慢性化することもなく、よくなることが多いのです。
しばらくは、生活上の制限もありますが、進学にさしつかえるようなことはほとんどありません。リウマチ熱のポイント
溶連菌感染症です

リウマチ熱のポイント
溶連菌感染症が原因

●リウマチ熱はどんな病気か?
リウマチ熱は溶連菌感染後に起こりますが、感染症ではありません。感染症に対する非化膿性急性炎症です。学童期(5~15歳)の子どもに多く発症します。男女差はありません。高熱が出て、関節がはれて痛みます。心臓のはたらきが損なわれることもあります。

●リウマチ熱の原因はなにか?
扁桃炎などを来す溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)(溶連菌)の感染で起こります。溶連菌と人体の組織が似たような抗原部分をもつため、自分自身の免疫が誤って自分の体の組織を攻撃し、発症します。

●リウマチ熱の症状の現れ方は?
①かぜ症状
病初期はのどの痛み、そして2~3週間後に発熱と関節痛で発病します。
②多関節炎(たかんせつえん)
約70%にみられ、高熱を伴い、肘(ひじ)、手、膝(ひざ)、足など比較的大きな関節に炎症がみられます。痛み、熱感、発赤を伴い、移動性であることが特徴で、関節リウマチのようにあとになって関節が変形することはありません。腫れは2~4週間続きます。
③心炎(しんえん)
最も問題となる疾患で、約半数の患者さんに合併します。とくに僧帽弁(そうぼうべん)、大動脈弁膜症が起こることもあります。自覚症状として動悸(どうき)、胸苦しさを訴えることがあります。その当時には何の症状も訴えず何年もたってから心雑音などで気づくことも。心膜炎による胸痛、心不全による息切れ、吐き気、胃痛、空咳、浮腫などで症状で気づくこともあります。
④小舞踏病(しょうぶとうびょう)
脳の障害で、手足が勝手に動いてしまいます(不随意(ふずいい)運動)。字が下手になったり、行儀が悪くなる、服を着たり、食事も困難になるなどの症状を示すこともあり、チックや多動症と誤診されることもあります。寝ているときには起こらないという特徴があります。  以上のほかに、皮膚の紅斑や皮下結節が認められることもあります。

●リウマチ熱の検査と診断は?
溶連菌感染の証明はのどの細菌培養、迅速診断キット、血清抗体検査(ASO、ASK)などで確定されます。急性期には血液検査で炎症反応が陽性です。心臓の病変は心雑音の有無や、心臓の超音波検査で診断します。

●リウマチ熱の治療は?
溶連菌の感染に対して、抗生剤を投与する必要があります。ペニシリン系の抗生剤を10~14日間続けて内服します。心炎や小舞踏病にはステロイド薬を使用します。関節炎には非ステロイド性消炎鎮痛薬を肝機能などをモニターしながらアスピリンを2週間継続してその後2週間ゆっくり減らしていきます。ステロイドを併用することもあります。  通常、関節炎は3~4週間で軽快します。心炎は早期に適切な治療を開始すれば、ある程度軽快しますが、なかにはリウマチ性弁膜症(べんまくしょう)を残すこともあります。

●リウマチ熱の注意点は?
一度リウマチ熱にかかると溶連菌感染で再発しやすいので、予防のために抗生剤をのみ続けなければなりません。予防する期間は、最低でも約5年間は必要です。弁膜症になったら一生のみ続けなければならないこともあります。
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リウマチ熱の診断と治療のポイントを説明します