気管支肺異形成症 呼吸窮迫症候群

症状イメージ

呼吸窮迫症候群のポイント
肺の未熟性に基づく肺サーファクタントの欠乏による肺虚脱(無気肺)
●呼吸窮迫症候群はどんな病気か?
肺胞をふくらんだ状態に保つために、肺胞の細胞から表面活性物質(サーファクタント)が分泌されていますが、それが不足 しているか、あるいはそのはたらきが阻害されたために、肺胞がしぼんでしまって呼吸困難を起こす病気です。

●呼吸窮迫症候群の原因はなにか? 肺胞をふくらんだ状態に保つために、肺胞の細胞から表面活性物質(サーファクタント)が分泌されていますが、それが不足し ているか、あるいはそのはたらきが阻害されたために、肺胞がしぼんでしまって呼吸困難を起こす病気です。 早期産低出生体重児に発症します。その頻度は在胎28週で70%、在胎30週で55%、在胎32週で35%、在胎34週で20% の割合で発症し、36週以降に出生した児ではほとんどみられません。

●呼吸窮迫症候群の症状の現れ方は?
出生後まもなくから、陥没呼吸(息を吸い込む時に肋骨の間や胸骨の下がへこむ呼吸)や呻吟(しんぎん)(息を吐く時にう なり声を出す)がみられるようになり、次第に進行します。チアノーゼもみられ、多くの場合は酸素投与のみでは改善しません。

●呼吸窮迫症候群の治療は?
肺に管を入れて人工呼吸器による呼吸補助を行いながら、できるだけ早期に人工肺表面活性物質(サーファクタント)を気 管から肺に注入します。高濃度酸素や人工換気による肺傷害がおこり肺胞上皮・毛細血管内皮の透過性が亢進、 肺浮腫の状態となります。胎便の吸引や、仮死(かし)などが原因にある場合は、肺の洗浄、強心薬などによる循環の補助な どの治療も同時に必要になります。これらの治療を行うことで、多くは2~3日で改善します。  しかし、この病気を発症する赤ちゃんは未熟性が強いために、普通は数日から数週間の人工呼吸器による治療が必要 になります。この病気のあとに「気管支肺異形成症(いけいせいしょう)」を発症してくることも多く、人工呼吸器などによる治 療が長期間必要になることもあります。在胎24週未満の未熟性の強い早産児では呼吸窮迫症候群自体の予後も依然 として厳しい状況です。また呼吸窮迫症候群が順調に改善しても、動脈管開存症や敗血症、頭蓋内出血などの合併 症が生命予後に大きく影響します。

気管支肺異形成症のポイント
気管支肺異形成症は、肺の反復損傷による
●気管支肺異形成症はどんな病気か?
新生児で、生後1カ月を過ぎても酸素吸入を必要とするような呼吸困難症状が続くものを「慢性肺疾患」と呼んでいます。 原因やX線写真の所見などからいくつかのタイプに分けられていますが、そのなかでも、呼吸窮迫(こきゅうきゅうはく)症候群 のあとに発症する慢性肺疾患を気管支肺異形成症と呼びます。

●気管支肺異形成症の原因はなにか?
多くの場合は出生直後に呼吸窮迫症候群があり、それに対して人工呼吸器や酸素による治療が行われています。人工呼 吸器で加えられる圧力や、酸素の毒性などによってまだ未熟な肺胞や気管支が障害を受けることにより、組織が傷つけられ ます。また、分泌物も多くなるため、無気肺(むきはい)(分泌物などで気管支が詰まり、肺胞(はいほう)がしぼんでしまうこと) が起こりやすくなります。無気肺となった部分のまわりの肺胞は逆に広がりすぎてしまい、肺内で空気の分布が均一ではなく なります。  これらが原因となって、吸った空気と血液の間で、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかず、体内の酸素が不足したり、 二酸化炭素がたまってしまいます。

●気管支肺異形成症の症状の現れ方は?
出生直後の呼吸窮迫症候群による呼吸障害が落ち着いたあと数日から数週間くらいで、多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼな どの呼吸障害がゆっくりと進行してきます。胸部X線検査では、泡沫状(ほうまつじょう)陰影、気腫状(きしゅじょう)陰影、索 状陰影などの異常所見が現れます。

●気管支肺異形成症の治療は?
呼吸障害に対する補助として、人工呼吸器による補助や酸素吸入が必要になります。むくみが呼吸障害を悪化させるので、 水分の制限と利尿薬の投与が行われます。気管支拡張薬やビタミンE、ビタミンA、ある種の抗生剤(マクロライド系)も使 われることがあります。  呼吸障害が急に悪化した場合や、人工呼吸器による治療が長期化しそうな場合に、ステロイドホルモンによる治療が行わ れることがあります。肺組織の自己修復を促すために、栄養を強化することも非常に大切です。 ●気管支肺異形成症の注意点は
気管支肺異形成症にかかっている新生児は、退院後も、タバコの煙、室内暖房器具やストーブの煙にさらされることがないよ うにしなければなりません。上気道感染症患者との接触も避けなくてはなりません。場合によっては、RSウイルス感染症に対 してある程度免疫をつけるために、このウイルスに対する特異抗体を投与することも可能です。この抗体は、秋から冬の間に 1カ月ごとに注射しなくてはなりません。