神経芽細胞腫

症状イメージ

神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)のポイント
乳児にもっとも多いガンです
●神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)はどんな病気か
神経芽細胞腫とは、よくみられる小児癌で、神経系の一部に発生します。 この病気は、体のいろいろな部位にある特定の種類の神経組織に発症します。腹部や胸にある神経、特に副腎(左右の 腎臓の上にある)の交感神経節にに発症することがよくあります。非常にまれですが、脳にできることもあります。 神経芽細胞腫は乳児では最も多くみられる癌で、子供にできる腫瘍としても年齢にかかわらず最も多いものです。 子供にみられる神経芽細胞腫の約80%は5歳未満の子供に発症します。この癌の原因は不明ですが遺伝することがあ ります。副腎にできた時は、おなかの奥のほうに硬いしこりが触れることで見つかりますが、しこりが小さい時は気づかれません。 背骨の両側にできたものは、脊髄(せきずい)の神経を圧迫して両足の麻痺が起こり、これが発見の手がかりになることもあ ります。  進行が早く、骨、骨髄(こつずい)、肝臓、皮膚などに転移します。頭の骨に転移して骨がはれたり目が飛び出したり、 骨髄に転移して貧血になったりします。転移によって肝臓がはれたり、皮膚にしこりができたりすることもあります。

●神経芽細胞腫の症状と診断
最初は何となく元気がない、食欲が落ちた、時々腹痛を訴える程度の軽い症状しかありません。発熱や貧血(骨髄転移 による)、点状出血(血小板減少による)、おなかのしこり、頻尿(ひんにょう)、足の麻痺、呼吸困難など特徴的な症状が 現れ始めますが、こうなるとかなり進行していて転移も起こっています。  このがんはアドレナリン系の物質をつくり出すために、これが大量に尿中に排泄されます。ところが最近、集団スクリーニ ングをやらなくなりました。それは一歳未満の神経芽細胞腫はたくさん見つかる物の、この頃のものは進行して命を奪う物ではなく また行っても一歳以上の神経芽細胞腫の患者さんの数は減らないことがわかったためです。実際一歳未満で見つかる神経芽細胞腫は他臓器転移があっても自然治癒することがあることがわかっています。神経芽細胞腫の約90%は、エピネフリンなどのホルモンを産生します。このホルモンは心拍数の増加や不安感を引き起こします。 尿中のバニルマンデル酸(VMA)もしくはホモバニルマンデル酸(HVA),またはその両方が,患者の95%以上において 高値となります。 神経芽細胞腫は,ウィルムス腫瘍,その他の腎腫瘤,横紋筋肉腫,肝芽細胞腫,リンパ腫,生殖器原発の腫瘍との 鑑別が必要です。 転位の有無をみるためCT、MRIや骨シンチ、骨髄生検などの検査を行います。

●神経芽細胞腫の治療と予後は
低リスクの疾患(1歳未満,N-myc癌遺伝子の増幅がない,進行段階が低い[限局性]疾患)の小児の場合,予後は良好です。 早く見つかれば、手術でがんを取り除くことが可能です。抗がん薬で先に治療を始めて、がんが小さくなった時点での手術も行われています。進行していれば手術後に抗がん薬が使われますが、場合によっては放射線を照射するなどの治療が組み合わされます。 また取り出した細胞の遺伝子を見ることで予後を判断できるようになってきました。  集団スクリーニングで見つかるような乳児期のタイプの多くは、がんの性質が悪くないのでほとんどが治ります。しかし1歳以後で進行したタイプは、強い治療を行ってもその結果がまだ十分にでるとはいえません。

●お母さんが気を付けると早期発見ができます。
おむつ替えやお風呂に入れた時など、時々おなかの様子を観察してください。おなかに硬いしこりやふくらみ、尿の回数が増えたなどの症状を見つけたら、すぐに小児科を受診します。顔色が悪い、食欲や元気がないという症状がこのような病気でみられることもあり、その際には医師によく調べてもらいます。  神経芽細胞腫は進行が早く、全身に転移しやすいがんなので、初期のうちに発見し、一刻も早く治療を始めることが望まれます。