反復性腹痛

症状イメージ

反復性腹痛の診断と治療のポイント
月に一回以上生活に支障がでる腹痛が3ヶ月以上続くこと
反復性腹痛はどんな病気か
腹痛が少なくとも1カ月に1回(多くはほとんど毎日から週に1~2回)、3カ月
以上にわたって続き、生活の障害となる病気です。
これは3歳から中学生くらいの子供で、熱や嘔吐・下痢もなく差し込むような腹痛が繰
り返しおこる状態で、真っ青になったり、冷や汗をかくこともあります。 医者にかかっても
血液検査やレントゲンでも異常がなく、特に器質的な疾患がないと診断され対応に困
ってしまいます。このような子供の場合、腹痛は胃腸の血流が悪くなったり副交感神経
の緊張で腸の動きが活発になったり、ガスが溜まることで起こります。

反復性腹痛の原因
反復性腹痛は内臓などの異常が原因の場合(器質的疾患)と、内臓などに異常を
認めない場合(非器質的疾患)の2つの群に分類されます。
器質的疾患のなかには、消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)(胃・十二指腸潰瘍)、
総胆管拡張症(そうたんかんかくちょうしょう)、慢性便秘、炎症性腸疾患(潰瘍性大
腸炎、クローン病)、慢性膵炎(すいえん)などの消化器疾患や、てんかんがあります。
非器質的疾患の代表的なものに、過敏性腸症と心理的ストレスがあります。反復性
腹痛は中学生の10~15%が経験するといわれています。その原因として非器質的
疾患が最も多く、なかでも過敏性腸症(かびんせいちょうしょう)の可能性が60%、原因
不明が20%、ストレスに対する心因反応が10%で、器質的な病気がある場合(腹痛
の原因がはっきりとする場合)はわずか10%にすぎません。
自律神経が未発達な為に起こる腹痛です。人間は体内リズムをもち、地球の自転に
合わせて朝目覚め、夜寝るために「ホルモン分泌」、「交感・副交感神経」、「体温」な
どがリズムを持っています。このリズムが夜更かし・不規則な生活・食習慣・運動不足・
ストレスなどでうまく働かない為におこります。朝空腹感で目覚めることがなく、起床して
も体内の血流の調整(手足の血管の収縮により脳への血流や増加)が行われずボッー
としたり、頭痛・腹痛を訴えるようになります。子供の不安感や悩みが原因のとき。
友達と喧嘩したり・いじめられたり、また勉強したくない等の不安や悩みが要因となり腹
痛などの身体症状を訴えます。学校で何があったのと聞いても、「特に何もない」と答え、
登校時間を過ぎると腹痛等も消失し元気になってきます。「体に異常がないから学校に
行きなさい」と頭ごなしに決め付けることは、1・2回は成功しても繰り返すうちに、登校拒
否等へとつながっていくと考えられています。

反復性腹痛の症状の現れ方
症状は臍(へそ)の周囲を痛がることが多く、強さや持続時間は一定でないものの、腹痛
は1時間以内に治まります。腹痛とともに、頭痛、顔色不良、嘔吐がみられることがありま
すが、普段は無症状です。症状は心理的なストレスが加わると悪化し、週末や休日に
なると軽快する傾向があります。

反復性腹痛の検査と診断
診断は、腹痛に関しての詳しい情報、および病歴の聴き取りが中心となります。反復性
腹痛の原因は前述のように、非器質的疾患、なかでも過敏性腸症が大半を占めるので、
検査は家族、とくに母親と本人の安心感を得るために本人の苦痛のすくないもの最小
限にします。
器質的な病気が強く疑われる場合には、血液検査や便・尿検査、腹部超音波検査
そして必要なら消化管内視鏡検査を行います。

反復性腹痛の治療
治療は原因によって異なります。器質的な病気の場合は原疾患に対する治療が優先
されますが、非器質的疾患で過敏性腸症の場合は定期的に外来を受診し、患者(母
親も含む)と医師の信頼関係を築くことに努めます。
過敏性腸症は完全治癒が難しく再発することが多いため、ドクターショッピングをする頻
度が高く、これを防ぐ必要があるからです。完治は難しいですが生命予後は良く、70%
の軽快でよしとするように納得する必要があり、そのための信頼構築が必要です。最近は
効果が期待できる薬が開発され、良い結果が出ています。
心因性(ストレス性)に対しては、心理療法と薬物療法を組み合わせて行います。

反復性腹痛の理解が必要です
腹痛発作の時は本当におなかが痛いことを理解し、持続する場合は外来を受診しま
しょう。しかし、両親が過度に心配をすると逆効果になることもあります。信頼できるかか
りつけ医を持ち、定期的に外来受診をしていきましょう。
また子供たちに、早寝早起きの規則正しい生活と自律神経を鍛える為に、裸足や裸
で運動させたり、水泳・水遊び・乾布摩擦等で皮膚を鍛えます。
また親子の会話もとても大切です。子供の気持ちをうまく聞き出し、子供と感情を共有
することによって初めて解決されていくので、日頃から親子の会話を楽しみながら学校で
の出来事や友達とのことを、子供から話すようにさせるのが大切です。
反復性腹痛で学校に行けない子供は、学校を含め、日ごろのすべての活動に復帰で
きるよう手助けします。子供が友人との活動に参加しなくなることに歯止めをかけ、学校に
かかわる問題とを教師、父兄、本人みんなで協力して解決します。痛みのために授業に
参加できない子供は、保健室に行くことを許可してもよいでしょう。また腹痛時に痛み止め
与えいたみを強くしないことも大切です。治療の最初の1?2週間は、子供は1日に1回か
それ以上保健室に行きたいというのが典型的です。時間がたてば、この行動の頻度は低
くなります。一般に、親が子供を特別扱いしたり病気扱いするのをやめると、心理的原因
による痛みはいったんは悪化しますが、その後改善することがおおいです。