無脾症(無脾症候群)

症状イメージ

無脾症(無脾症候群)のポイント
うまれつき脾臓がない病気
●無脾症(無脾症候群)はどんな病気か
うまれつき脾臓がない病気です。本来、各内臓は左右非対称に形作られていますが、先天的に左右対称性に形成される場合があります。たとえば心臓であれば、2つの心房がともに右心房の形態で、心室も右心室の形のみで左心室が痕跡的という、心臓の右側の成分だけで形作られたかのような状態になります。逆に、左側の成分だけで形作られたかのような状態になることもあります。この対称性は、全身の臓器に共通する傾向にあります。  脾臓(ひぞう)は胃の左側にある握りこぶし大の臓器で、主に古くなった赤血球を取り除いたり、免疫のはたらきに関与したりしています。全身の臓器が右側の成分だけで形作られた場合は脾臓がないことが多く、無脾症(むひしょう)といわれます。逆に左側成分が主体の場合は、複数の脾臓が認められることが多く、多脾症(たひしょう)といわれます。

●無脾症(無脾症候群)の原因は?
遺伝子の関与が考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。

●無脾症(無脾症候群)の症状の現れ方
脾臓が無いことによる症状より、この病気の場合、心臓に関しては肺動脈や肺静脈の異常を伴うことが多く、出生直後からのチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)で気づくことがあります。一方、多脾症の場合は、主に肺血流が増加して心不全症状で気づきます。また、不整脈が認められる場合もあります。  腹部の症状としては、腸の走行がおかしいために腸閉塞(ちょうへいそく)の症状(突然の嘔吐、腹痛など)が出たり、胆道系の病気になったりすることがあります。また脾臓がない場合、免疫系の異常から重症の感染を繰り返すことがあります。ただ脾臓が無いから必ずしも免疫力が落ちてしまうとは限りません。

●無脾症(無脾症候群)の検査と診断は?
心臓と胸部臓器、腹部臓器のそれぞれについて、左右どちらの形態で形作られているかの診断が必要です。心臓に関しては、心エコー(超音波)やカテーテル検査も有効ですが、全身臓器の診断としてMRI検査が有効です。

●無脾症(無脾症候群)の治療は?
脾臓が無いことに対する治療ではなく、無脾症候群と一緒に起こりやすい肺動脈異常・弁膜症などの治療が中心となります。肺血流の減少、増加による症状があれば内科的にコントロールします。外科的には、心臓の形態に合わせた手術が必要になります。  無脾症の場合、乳児期の早期に肺静脈の異常や弁逆流に対する手術が必要になる場合が多くありますが、これらは非常に難しい手術であり、残念ながら外科的治療が不可能と判断せざるをえない症例もあります。  最終的には、フォンタン型手術)を目指す人が多くなります。また、不整脈に対する治療や、ペースメーカーが必要になる人もいます。

●無脾症(無脾症候群)に気づいたら 注意点は?
合併する心奇形が最も大きな問題であるため、まず循環器専門医の診断を受ける必要があります。そのうえで感染症に対する対策や、腹部臓器の異常による症状に注意する必要があります。