子宮内膜症(子宮腺筋症・チョコレート嚢胞)

症状イメージ

子宮内膜症の特徴
子宮内膜が違う場所にできる病気
ほとんどが子宮外骨盤内にできる骨盤内子宮内膜症が多い
内性子宮内膜症・・・・子宮体部の筋肉層に子宮内膜ができる
これが子宮腺筋症
外性子宮内膜症・・・・子宮外の周囲や、外にちらばって子宮内膜ができる 多い

子宮内膜症の原因は
月経時に剥がれ落ちた子宮内膜の一部が、卵管を逆走して卵巣や腹部臓
器に達して増殖するという説があります。生まれつきという説も。
子宮内膜は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)
の影響を受け、健康な女性の場合、約28日の周期で、増殖と剥離、排出を
繰り返しこれが月経です。月経が終わると、子宮内膜がしだいに厚くなる増殖
期に入ります。卵胞が成熟して排卵が起こると、卵巣には黄体という組織が作
られ、プロゲステロンを分泌します。このホルモンの作用で、内膜から分泌物が
出るので、この時期を分泌期といいます。内膜が厚くなったり、分泌物が出るの
は、すべて受精卵を迎え入れる準備です。妊娠が成立しなかった場合、内膜
の一部がはがれて出血し、膣から体外へ排出されます。

子宮内膜症の症状は?
①月経痛(月経困難症)
子宮内膜症の月経痛(生理痛)の特徴は?
ⅰ>かなり強い生理痛で鎮痛剤が必要(市販の物ではとれないほど)
ⅱ>年々痛みが強くなる 軽くなることはない
ⅲ>腹痛だけでなく、肛門や膣の奥の方も痛い
ⅳ>腹痛に吐き気、嘔吐をともなう

②生理痛以外にも腹痛がある
生理と生理の間(排卵期)や生理前にも腹痛がある
③性交痛
子宮内膜症がダクラス窩にあるとしばしばセックスの時、膣の奥が痛む
こと(性交痛)があります。
④月経時に下痢しやすい・過多月経(月経時の血液量が多い)である
⑤不妊症
子宮内膜症があると全ての人が不妊症になるわけではありませんが、
逆に不妊症の20%位が子宮内膜症が原因です。

部位による症状の違い
〔卵巣内〕 チョコレート嚢胞によりお腹が張った感じや下腹部痛がみ
られます。チョコレート嚢胞が破けると激しい腹痛がみられます。
〔卵巣表面〕 強い月経痛がみられます。
〔卵管内〕 不妊や激しい痛みがみられます。
〔ダグラス窩〕 内膜症が仙骨子宮靱帯からダクラス窩にかけてあると
癒着が起こり、性交痛がみられます。
〔直腸〕 月経時に排便痛があり、進行すると排便障害を起こします。
〔小腸〕 軽症では漠然とした下腹部痛がみられます。腫大すると通過障害、
場合によっては腸閉塞をおこしますし、下血や血便がみられることもあります。
〔膀胱〕 血尿がみられます。

子宮内膜症の診断は?
1.問診
2.内診
3.超音波
4.MRI
5.血液検査(CA125というマーカー)
6.腹腔鏡
  問診で内膜症の疑いがあると判断した場合、内診にて子宮の後方(ダグラス窩)
にしこり(硬結)がないかどうか、あるいは圧痛があるかどうか、あるいは卵巣がはれ
ていないか(腫大)どうかわかります。ある程度進んだ内膜症ではこの内診でほぼ
診断がつきます。内診の時間は1~2分間で特別な苦痛を伴うものではありません。
超音波は内膜症が卵巣の内にでき、チョコレートのう腫とよばれるように血液が
たまった状態を診断するのに効果的です。MRIという断層撮影も同様です。
血液検査は補助的な方法ですが,血液中のCA-125という腫瘍マーカーが
内膜症では高くなることがあり、このCA-125が高値であれば内膜症がある程
度進んだ状態と考えられます。しかし、これが正常値であるからといって内膜症
を否定することはできません。
確定診断に腹腔鏡は有効です。これは腹腔鏡という内視鏡(おへその直下か
ら内視鏡を入れ、骨盤の内を観察し、さらには内膜症の部分を取り除いたりす
ることもできます。)をお腹の内に入れて、直接診断する方法です。
腹腔鏡が必要な場合は内膜症がかなり進んでいて、薬などの治療では不充
分な方で、内視鏡をみながらの切除、焼灼などの外科的処置が必要な人。
あるいは内膜症が進んでいて不妊症を伴う人などが腹腔鏡の対象になります。

内膜症の治療は
1.鎮痛剤
生理痛(月経痛)が強く日常生活に支障をきたす場合に用いられます。この場合、痛みが強くなる前に早めに服用することがコツです。通常、ボルタレン(内服,坐薬)、ロキソニンなどが使われます。これら鎮痛剤は単に痛みを一時的に和らげるだけの効果しかありません。内膜症そのものを治療したり、内膜症の進行をくい止める効果はありません。
2.ホルモン療法
a.ピル(Pill)
ピルとは何?:きちんと生理がくる女性は毎月きちんと排卵があると考ええてさしつかえありません。このような人では卵胞ホルモン(エストロゲン(E))と黄体ホルモン(プロゲステロン(P))という2種類の女性ホルモンが卵巣から分泌されます。このEとPのうち、特にP(黄体ホルモン)は生理痛の原因になります。ですから、生理痛を軽くする、あるいはなくすにはPが分泌されるのをおさえてしまう方法が有効です。つまり、排卵を一時的にストップする(排卵抑制)方法が効果的です。これにはピルを服用するのが最も簡単な方法です。ピルにはその内にEとPを含んでいるため、それを服用すると、服用している間は排卵がストップします。しかし、月経様の出血(生理)は定期的にあります。子宮内膜症の生理痛はこのピルで痛みを軽くすることが可能です。あるいは全く月経痛がなくなってしまう人も多いのです。ですからピルがきく場合はピルを毎月繰り返し服用できます。もしピルだけで生理痛が完全になくならなければ鎮痛剤を併用することももちろん可能です。 もう一つピルでの利点があります。内膜症はそのまま放置しておくと毎月卵巣から分泌されるEとPにより年々に進行していく可能性のある病気です。逆にピルにより内膜症の進行をくい止めたり、進行する速度を遅らせたりすることが可能です。
ピルのメリット
・副作用が少ない~ない ・長期間服用が可能 ・内膜症による生理痛のかなりの部分が軽減できる ・内膜症の進行にブレーキをかけられる可能性がある ・月経の前のいろいろな不快な症状(月経前症候群PMS)も軽減する ・月経の量を少なくできる ・避妊法として最も効果的な方法である
ピルのデメリット
・1ヶ月間のうち3あるいは4週間服用する必要がある ・避妊効果があり、妊娠を希望している人では使えない ・スモーカーなどは不向き

b.ディナゲスト(Dinagesut)
ディナゲストとは最近新たに開発された黄体ホルモン剤です。本剤を1日2回服用することにより、ピルと同様に排卵がストップし卵巣からの女性ホルモン、特に卵胞ホルモンの分泌を抑制します。さらに本剤は子宮内膜症を直接抑制し縮小させる効果があります。従がってすぐれた鎮痛効果があります。本剤は比較的長期に服用できることも利点の一つです。

c.ホルモン療法 Gn-RHアナログ剤(リュープリン、スプレキュア)
GnRHアナログ製剤(Gn-RHaと略)とは、排卵をおこすよう指令を出す脳の中のホルモン中枢に一時的にブレーキをかけ、排卵をストップさせます。その結果、卵巣からのEやPの分泌がかなり低下し、内膜症を一時的に萎縮させることが可能です。通常このGn-RHa剤を6ヶ月間投与すると内膜症が小さくなる効果が期待できます。また治療の間は月経がありません。Gn-RHaのメリット
・月経そのものをストップするため月経痛を止める効果が速やかである ・内膜症を一時的ではあるが縮小できる
Gn-RHaのデメリット
・副作用が多少ある(のぼせや発汗などの更年期に似た症状) ・長期的に使用できない(最長6ヶ月間)
3.手術療法
薬では治療困難な内膜症の場合(かなり進行した内膜症やピルやGn-RHaでは改善しない内膜症、あるいは妊娠を希望する内膜症の方)は、手術療法が効果的ですし、最も根本的な治療法ではあります。最近ではお腹を切開しなくても腹腔鏡といって内視鏡をみながら処置する方法が可能になってきました。この方法でお腹の中の内膜症を取り除き、あるいは癒着をはがしたり、小さな内膜症ならレーザーで焼きとばす(蒸散)などの処置が可能です。しかし、内視鏡といえども3~4日の入院が必要ですし、手術の時と同様、全身麻酔のもとで行ないます。また医療者(医師)もある程度の技術の習熟が必要ですから、内膜症がある人の全ての人に腹腔鏡を行なうわけではありません。
腹腔鏡治療が必要な内膜症
・内膜症がかなり進行していて薬物療法(鎮痛剤、ホルモン療法)では充分治療できない人 ・内膜症が不妊症の原因となっている人 ・チョコレートのう腫(卵巣にできた内膜症が腫れて大きくなっている状態)が破裂する可能性がある人 F.治療法のうちどれを選択?
1.独身で内膜症の進行が軽く、生理痛だけが強い場合
(独身で内膜症のある人のかなりの割合がこういう人です) 第1選択 ピル(あるいは鎮痛剤併用) 第2選択 鎮痛剤

2.独身で内膜症がある程度進んでいて(チョコレートのう腫などもある)、生理痛や性交痛、生理以外の腹痛などがある場合、月経過多症の場合
(独身で内膜症のある人のかなりの割合がこういう人です。) 第1選択 Gn-RHa剤を6ヶ月間→その後ピルの継続、ディナゲスト 第2選択 ピル(あるいは鎮痛剤の併用)、ディナゲスト 第3選択 Gn-RHa剤、ディナゲスト チョコレートのう腫が大きく、破裂する危険も考えられる場合→腹腔鏡手術
3.結婚していて内膜症が軽く、まだ妊娠を希望していない人
(独身で内膜症のある人のかなりの割合がこういう人です) 第1選択 ピル 第2選択 鎮痛剤4.結婚していて内膜症が比較的進んでいてまだ妊娠を希望しないが症状が重い人
第1選択 Gn-RHa→ピル(鎮痛剤併用)、ディナゲスト 第2選択 ピル
5.結婚していて内膜症が原因で不妊症の人
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