起立性調節障害(OD)の検査と診断
〜不安を解消し、正しく状態を知るために〜

「朝、どうしても起きられない」「立ち上がるとめまいやクラクラがする」「だるくて動けない」……。
このような症状でお困りではありませんか?

起立性調節障害(OD: Orthostatic Dysregulation)は、自律神経の働きが乱れ、立ち上がった際に体に適切な血液を送れなくなることで起こる「体の病気」です。決して「なまけ」や「気持ちの問題」ではありません

このページでは、病院でどのような検査を行い、どのようにして起立性調節障害と診断されるのか、その流れと具体的な検査内容をわかりやすく解説します。


1. 診断までの大きな3つのステップ

起立性調節障害の検査は、主に次の3つのステップで進められます。

ステップ 1
問診・症状チェック

どんな症状が、いつ頃からあるか確認する

ステップ 2
他の病気の除外診断

血液検査や心電図などで、似た症状の別の病気がないか調べる

ステップ 3
新起立試験・起立負荷試験

立ち上がったときの血圧や心拍数の変化を測る

起立性調節障害と診断するためには、「自律神経以外の臓器や血液の病気ではないこと」を確かめること(ステップ2)と、「実際に立ち上がったときに特徴的な体の反応が出ること」(ステップ3)の両方を確認することがとても大切です。


2. ステップ1:問診と症状のチェック

まずは、どのような体調のトラブルが起きているのかを詳しく伺います。起立性調節障害には、特徴的な症状のリスト(チェックリスト)があります。

よく見られる主な症状

  • 立ち上がったときに、目がくらんだり・めまいがする
  • 立ち上がったときや立っているときに気分が悪くなる、ひどいと倒れてしまう
  • 朝なかなか起きられず、午前中は体が重くて調子が悪い
  • いつも体がだるい、疲れやすい
  • 少し動いただけで胸がドキドキする(動悸)、息切れがする
  • 頭痛がよく起こる

その他に起こりやすい症状

  • 食欲がない、お腹が痛む
  • 乗り物酔い(車酔いなど)をしやすい
  • 顔色が青白いと言われる
  • 季節の変わり目に体調を大きく崩しやすい

これらの症状が複数当てはまり、後述する検査で他の病気が見つからない場合、起立性調節障害が強く疑われます。


3. ステップ2:他の病気がないか調べる「除外診断」

起立性調節障害と似た症状(めまい、強いだるさ、立ちくらみ、動悸など)を引き起こす病気は、実はたくさんあります。

そのため、採血や心電図などの基本的な検査を行い、「他の臓器やホルモンの病気が隠れていないか」を丁寧に確認します。

① 血液検査でわかること(貧血・ホルモン・栄養状態など)

・赤血球・ヘモグロビン(貧血の検査)

何を調べている?:血液の中で酸素を運ぶ「赤血球」や「ヘモグロビン」の量です。

もし異常があったら?:数値が低いと「貧血」です。体内に酸素が十分行き渡らないため、めまい、ふらつき、動悸、強いだるさが起こります。これは起立性調節障害の症状とそっくりなため、まず貧血を治療する必要があります。

・フェリチン(体の“蓄え鉄”)

ヘモグロビンが正常でも、体の中の「貯蔵鉄(フェリチン)」が空っぽになっていると、隠れ貧血として強い疲労感や頭痛が出ることがあります。特に成長期のお子さんや女性で重要です。

・甲状腺ホルモン(TSH, FT3, FT4)

何を調べている?:首のところにある「甲状腺」から出る、体の代謝を元気にするホルモンです。

ホルモンが少ない場合(甲状腺機能低下症):体が「省エネモード」になり、強いだるさ、朝の起きにくさ、低血圧、寒がりなどの症状が出ます。

ホルモンが多すぎる場合(甲状腺機能亢進症・バセドウ病など):体が「過剰モード」になり、じっとしていても胸がドキドキしたり、手が震えたり、立っているとすぐ脈が速くなったりします。

・電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)

何を調べている?:血液の中に含まれる塩分やミネラルのバランスです。

もし異常があったら?:ナトリウムやカリウムのバランスが崩れると、筋肉に力が入らなくなったり、立ちくらみが酷くなったり、便秘や吐き気を引き起こしたりします。体の中の水分量を維持するためにも大切な成分です。

・血糖値・HbA1c(糖分の検査)

何を調べている?:血液中の砂糖(ブドウ糖)の濃度です。

もし異常があったら?:血糖値が下がりすぎる「低血糖」になると、冷や汗、手足の震え、めまい、激しいだるさ、朝起きられないといった症状が出ます。甘いものの摂りすぎなどで急激に血糖値が上下する「反応性低血糖」も、自律神経を乱す原因になります。

・腎臓・肝臓の働き(BUN, クレアチニン, AST, ALTなど)

何を調べている?:老廃物を排出する腎臓や、代謝を担う肝臓の健康状態です。

もし異常があったら?:水分不足(脱水症状)になっていると、腎臓の指標(BUN)が上がります。また、過去に感染したウイルスの影響などで肝臓に負担がかかっていると、長引く全身のだるさの原因になります。

・副腎ホルモン(コルチゾール, ACTHなど)

何を調べている?:ストレスと戦ったり、血圧や血糖値をコントロールしたりする大切なホルモンです。

もし異常があったら?:このホルモンが不足すると、血圧を保てなくなり、朝まったく起き上がれないほどの強い疲労感や立ちくらみが起こります。

② 尿検査でわかること

・尿蛋白(尿の中のタンパク質)

腎臓の異常がないかを確認します。なお、起立性調節障害のお子さんでは、立っているときにだけ尿にタンパクが混ざる「体位性蛋白尿」という現象がよく見られます。これは病気というより体質的なもので、横になって採った「朝一番の尿」でタンパクが出ていなければ心配ありません。

・尿比重(尿の濃さ)

体が水分をどれくらい保持できているか分かります。水分調整のホルモンがうまくだせない病気(尿崩症)がないか、著しい脱水がないかを確かめます。

③ 心電図・胸のレントゲン検査でわかること

・心電図検査(心臓のリズム)

脈が乱れる「不整脈」や、心臓の電気信号の異常(QT延長症候群など)がないかを調べます。心臓自体の異常で急に脈が遅くなったり乱れたりすると、脳への血流が途絶えて倒れてしまうことがあるため、事前にしっかり確認します。

・胸部X線(レントゲン)検査

心臓の大きさや形のバランス、胸の病気がないかを調べます。起立性調節障害の方では、心臓自体がやや小ぶりに見える「スモールハート」と呼ばれる状態が見られることがあり、一回に送り出せる血液量が少なめであることが分かったりします。


4. ステップ3:診断の決定打「新起立試験(起立負荷試験)」

他の病気がないことが確認できたら、いよいよ起立性調節障害の確定診断とタイプ分類のための「新起立試験」を行います。

【検査はどのように行うの?】

  1. ベッドで横になる:まずはベッドに横になり、10分ほど静かに安静にします。この状態で血圧と心拍数を測り、基準となる値を記録します。
  2. すっと立ち上がる:指示に合わせて自力で立ち上がります。
  3. 立ったまま10分間キープ:そのまま動かずに10分間立ち続けます。
  4. 定期的な測定:立ち上がってから「1分後」「3分後」「5分後」「7分後」「10分後」など、決まったタイミングで血圧と心拍数を自動で測定し続けます。

※途中で気分が悪くなったり、強くめまいがした場合は、無理をせずすぐに医師や看護師に伝えて横になります。

検査でわかる「起立性調節障害の4つのタイプ」

立ち上がったときの血圧と心拍数の変化から、あなたがどのタイプに当てはまるかを診断します。タイプによって適した対策や薬が変わってきます。

① 起立直後性低血圧(INOH)

どんな状態?:立ち上がった「直後」に血圧がガクンと大きく下がり、元の血圧に戻るまでに時間がかかるタイプです。

特徴:起立性調節障害の中で最も多く見られます。立ち上がった瞬間にクラッとする立ちくらみや、目の前が暗くなる症状が特徴です。

② 体位性頻脈症候群(POTS)

どんな状態?:血圧はあまり下がらないものの、立ち上がって立位を続けていると、脈拍(心拍数)が異常に跳ね上がる(1分間に30回以上増える、または115回以上になる)タイプです。

特徴:立っていると胸がドキドキする(動悸)、息苦しい、頭がボーッとする、疲れやすいといった症状が出ます。

③ 血管迷走神経性失神(NMS)

どんな状態?:立ち上がった直後は問題ありませんが、数分間立っているうちに突然血圧が急降下し、脈拍も遅くなって、意識を失いそうになったり(失神)、気分が悪くなったりするタイプです。

特徴:朝礼中や朝の電車内でじっと立っているときに、急に顔が真っ白になって倒れてしまうような場合に多く見られます。

④ 遷延性起立低血圧

どんな状態?:立ち上がった直後は正常ですが、立位を数分以上続けているうちに、じわじわと時間をかけて血圧が下がっていくタイプです。


5. 検査を終えて:治療と対策へ

検査の結果、起立性調節障害の診断がついた場合、ご自身の「タイプ」や「重症度」に合わせた治療とセルフケアを開始します。

  • 生活習慣の工夫:お水をしっかり飲む(1日1.5〜2L以上)、塩分を少し多めに摂る、立ち上がるときはゆっくり頭を最後にして起き上がる、など
  • 薬による治療:血圧を維持するお薬や、自律神経のバランスを整えるお薬、漢方薬などを必要に応じて使用します

ご本人・保護者の方へ

起立性調節障害の検査は、体の仕組みを客観的な数字(血圧や心拍数)で確認するためのものです。「自分の体の不調に明確な理由があったんだ」と知ることが、改善への第一歩になります。

あせらず、医師と相談しながら、一歩ずつ体に合ったペースを取り戻していきましょう。