原発性胆汁性肝硬変 PBC ・原発性胆汁性胆管炎
頻度★
要点
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、肝臓のなかの小葉間胆管から隔壁胆管にかけての部位が、自己免疫によって徐々に破壊され胆汁の流れが悪くなり、慢性に肝内胆汁が滞り炎症(慢性非化膿性破壊性胆管炎)」が起こり、肝硬変へと進行する病気です。中年の女性に発生することが多い特徴的な病気です。指定難病であり、症候性PBCなどは、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成されます。

(1)原発性胆汁性肝硬変・原発性胆汁性胆管炎とは
 原発性胆汁性肝硬変は、ほとんど肝硬変になる前に診断され、最近は原発性胆汁性胆管炎と名称が変更されました。膠原病のひとつで、自己免疫反応による胆管破壊・胆管上皮細胞を標的とした自己免疫反応が関係しており、各種自己抗体が陽性で、他の自己免疫性疾患(シェーグレン症候群、 慢性甲状腺炎、関節リウマチ)を合併します。小葉間胆管・隔壁胆管の主要組織適合性複合体(MHCクラスI、II抗原)やと細胞障害性T細胞の作用、抗ミトコンドリア抗体の対応抗原・ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)のE2成分(PDC‐E2)の胆管上皮にみられ、これに対して自己免疫反応が起こり胆管破壊となります。

原発性胆汁性肝硬変は、母娘、姉妹での発症例の報告があることから、その発症に何らかの遺伝的要因の関与も推定されています。

(2)逆流性食道炎の症状は
  症候性原発性胆汁性肝硬変(symptomatic PBC、sPBC) 肝障害(慢性胆汁うっ滞)により自他覚症状がある
かゆみ(非皮膚瘙痒感)、黄疸、黄色腫←脂質異常症(高脂血症)による、脾腫→食道胃静脈瘤→出血傾向(血小板減少)、
腹水、肝性脳症、骨粗鬆症←カルシウムとビタミンDの吸収障害による 症状のあるPBCは予後がよくなのできちんとケアが大切です

  無症候性原発性胆汁性肝硬変(asymptomatic)PBC((aPBC) 初発の6割が無症状、脂質異常症(高脂血症)→皮膚の 黄色腫、肝腫大、骨粗鬆症を伴います。
皮膚のかゆみや黄疸などの症状が認められない場合は「無症候性原発性胆汁性肝硬変」とされます。無症候性PBCは20年生存率95%以上と予後良好です。

(3)原発性胆汁性肝硬変の診断 治療
  血液所見 胆道系酵素上昇 飲酒歴 薬剤歴 サプリメントの摂取の有無確認
アルカリフォスファターゼ ALP上昇 γ-GTP上昇 LAP上昇
抗ミトコンドリア抗体陽性(AMA) 陰性でも抗核抗体(ANA)陽性 discrete speckledパターンなら 他の疾患の除外 脂肪肝 閉塞性黄疸の除外 肝生検で慢性非化膿性破壊性胆管炎
→原発性胆汁性肝硬変(PBC)
と診断 合併症のチエック(シェーグレン症候群 橋本病 関節リウマチ 自己免疫疾患)

(4)原発性胆汁性肝硬変の重症度判定 予後 合併症
PBC の進展は緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の3型に大きく分類される。
PBC は慢性に緩徐に経過し、急性障害は呈さないで長期に肝予備能が保たれることが多い。
重症度は症候性PBC に進展した場合に評価され、血清ビリルビン値をPBC 用に修正したChild-Pugh分類が用いられる。
Child-Pugh分類(PBC用)
脳症      なし1点   Greade1~2 2点  Greade1~2 3点
腹水      なし1点   軽度 2点     中等度 3点
血清ビリルビン  4以下1点  4~10 2点    10以上 3点
血清アルブミン  3.5以上1点 2.8~3.5 2点    2.8以下 3点
PT-INR  1.7以下 1点 1.7~2.3 2点 2.3以上 3点 GreadeA 5~6点 GreadeB 7~9点 GreadeC 10~15点
合併症
骨粗鬆症、脂質異常症(黄色腫)、乾燥症候群、甲状腺機能低下症、貧血、ビタミン摂取不良、肝硬変・肝細胞癌を合併のチェック
他の自己免疫疾患のチェック。

症候性PBC  肝障害による自覚他覚症状あり 黄疸 皮膚掻痒感 腹水 食道静脈瘤などある 予後不良
無症候性PBC 肝障害による自覚症状なし 20年生存率95%以上と予後良好です。

(5)原発性胆汁性肝硬変の治療
 PBCに対する治療
①ウルソデオキシコール酸(ウルソ) 臨床検査値の改善効果、早期例進展を遅延
②ベザフィブラート投与
 自己免疫性肝炎に対する治療
  ②ステロイド
高脂血症に対する治療・皮膚そう痒感に対する治療・骨粗鬆症に対する治療を行います

 進行性 胆汁うっ滞肝硬変は移植も考えます。 
肝移植適応時期の決定は、Mayo updatedモデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。 エビデンス エビデンス
Mayoリスクスコア MELD (model for endstage liver disease)スコアにより15点以上で判定します。

(5)原発性胆汁性肝硬変の出題傾向
 原発性胆汁性肝硬変に関しての国試、認定医、専門医試験では 中年女性に多い(8:1) 無症候例が60割以上 高ミトコンドリア抗体陰性と進行スピードは関連がない 第一選択薬はウルソ 2番目がベラパミン 肝移植後の5年生存率は70%をこえるなどがあります。