三尖弁閉鎖症

症状イメージ

三尖弁閉鎖症(こども)のポイント
三尖弁閉鎖症(こども)は先天性の病気です
●三尖弁閉鎖症はどんな病気か
右心房と右心室の間の三尖弁が、先天的に閉鎖している状態です。全身から右心房にもどってきた血液は、三尖弁が閉じているので心房中隔(ちゅうかく)にあいた穴(心房中隔欠損)を通って左心房に抜けます。左心房で肺からの血液と混ざって左心室に入り、その後大動脈から全身へ流れるとともに、一部は心室中隔欠損や動脈管を通って肺に流れます。  先天性の心疾患で、頻度は全先天性心疾患の1~3%です。 三尖弁逆流(三尖弁閉鎖不全)は、右心室が収縮するたびに三尖弁を通過する血液が漏出(逆流)する状態です。 右心室が収縮して血液を肺へ送り出すたびに、血液の一部が右心房に逆流するため、右心房内の血液量が増加します。その結果、右心房は拡張し、右心房に入る静脈の血圧が上昇して、体から心臓へ流れる血流への抵抗が生じます。 三尖弁逆流は普通、右心室が拡大し、右心室から肺に行く血流への抵抗が強まる結果、起こります。この抵抗は、肺気腫や肺高血圧症のような重症で長期にわたる肺の病気や、狭くなった肺動脈弁(肺動脈弁狭窄)によって増大します。代償機構として、右心室はさらに激しく血液を送り出すために拡張して肥厚し、弁の開口部は大きく伸びて開きます。 そのほか、より少ない原因としては、心臓弁の感染症(感染性心内膜炎)、フェンフルラミンの使用、三尖弁の先天異常、外傷、粘液腫性変性(弁の張りが徐々に失われる先天性疾患)があります。

●三尖弁閉鎖症の原因は?
原因は不明です。胎児期に1本の管から心臓が形作られる過程での異常といわれています。 三尖弁が欠如しさらに右心室の形成不全を伴った状態で、合併奇形がみられることが多い病気です。心房中隔欠損や心室中隔欠損,動脈管開存,大血管転位などが合併します。 三尖弁閉鎖は先天性心奇形の3%をです。最も多い型(約50%)では,心室中隔欠損(VSD)+肺動脈弁狭窄である。肺血流が減少し、右左短絡が心房レベルに発生するため,チアノーゼを来す。他の30%では,大血管転位を伴うが肺動脈弁は正常であり,そのため肺血流が左心室から直接引き込まれることになり,典型例では心不全を来すことになる。

●三尖弁閉鎖症の症状と診断
生まれてすぐにチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)で気づきます。とくに、肺への血流が行きにくいタイプの場合はチアノーゼが強く認められます。  逆に、肺への血流が行きやすいタイプの場合は、チアノーゼの症状が軽いかわりに、多呼吸、体重増加不良などの心不全症状が現れる場合もあります。 三尖弁逆流は、体力低下や疲労感のような漠然とした症状を引き起こします。これらの症状が生じるのは、心臓が送り出す血液の量が少なくなるからです。そのほかの症状は、首の拍動感と、腫大した肝臓による右上腹部の不快感だけです。これらの症状は、血流が心臓から静脈へ逆流することによって生じます。右心房の拡張は、急速で不規則な拍動(心房細動)を引き起こします。最終的に、心不全を発症し、体、主に脚に体液がたまります。 診断は、病歴と診察所見、心電図検査、胸部X線検査の結果に基づきます。聴診では、血液が三尖弁を逆流するときに生じる特徴的な心雑音が聞かれます。心エコー検査(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)は、逆流が生じている弁と逆流している血液量を描出できるため、逆流の重症度を評価できます。

●三尖弁閉鎖症の治療
普通、三尖弁逆流は、ほとんど、あるいはまったく治療する必要はありません。しかし、肺気腫、肺高血圧症、あるいは肺動脈弁狭窄のような基礎疾患は、治療が必要です。三尖弁逆流の結果生じる心房細動や心不全の治療には、三尖弁に対する手術は普通、必要ありません。 特徴的な心電図の所見や、心エコー(超音波)で診断します。

●三尖弁閉鎖症の治療は?
肺の血流が少ない場合は、胎児期の名残である動脈管(大動脈と肺動脈の間にある血管で、普通は生後すぐに自然に閉じてしまう)が閉じてしまうとよりチアノーゼが強くなるので、まず動脈管を閉じないようにする薬を使います。そのうえで、乳児期早期に腕に向かう動脈と肺動脈とを直接、あるいは人工血管を使ってつなぐ手術(ブラロック・トーシック(BT)短絡(たんらく)術)を行って肺への血流を確保します。  肺血流が多く心不全症状がある場合、利尿薬などの内科的治療でコントロールできない時は、肺動脈を軽くしばって血流を制限する肺動脈絞扼術(こうやくじゅつ)を行います。また、この病気の場合、右心房から左心房へと抜ける穴がしっかりあいていないと血液の流れが滞るので、そこが狭い場合はカテーテルで穴を広げる治療が必要になります。  それらの治療をして血行動態を安定させて体重増加を待ち、最終的には、フォンタン型手術(図11)を行います。これは、心臓から出た血液が、全身をめぐったその勢いで肺まで循環してから心臓にもどってくるようにする手術です。

●三尖弁閉鎖症に気づいたら 注意点は?
専門医によって全身の血液の流れのバランスを十分に調べます。肺への血流がバランスよく調節された状態で、手術ができる体重になるまで成長を待ちます。