内服の抗生剤だけでは治療が困難になる場合も
急性扁桃腺炎のポイント
頻度★★★★
白く張り付いているのは膿(膿栓)
●急性扁桃腺炎はどんな病気か?
主に口蓋扁桃(こうがいへんとう)の急性炎症を指します。口をあけてのぞくと、のどちんこの横にある口蓋扁桃が赤くなってはれていたり、または扁桃表面が白色のうみでおおわれるタイプがあります。
●急性扁桃腺炎の原因はなにか?
細菌感染によるものと、ウイルス感染によるものがあります。原因菌としては、化膿性連鎖球菌(れんさきゅうきん)、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌などがあります。
●急性扁桃腺炎の症状の現れ方は?
のどの痛み、発熱、嚥下痛(えんげつう)や耳への放散痛、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振があります。とくに小児の場合、経口摂取の不能により脱水症状となって重症化するので注意が必要です。
●急性扁桃腺炎の検査と診断は?
症状と、扁桃の状態を観察します。血液検査では、白血球の増加、炎症の程度をみるCRP陽性などをチェックし、さらに脱水の状態をみるため尿検査をします。適切な抗生剤を投与するために、扁桃の細菌培養検査を実施することがあります。
●扁桃腺炎の治療は?
十分な水分の補給、安静、うがいが大切です。 薬物治療としては、細菌に対して抗生物質、発熱や痛みに対して消炎鎮痛薬を5日間程度、さらに口腔内を清潔に保つためにうがい薬が処方されます。炎症症状が強い場合、脱水状態のある場合は、偽膜があり重症化したものは抗生剤などの静脈注射、点滴治療が行われます。 重症化すると扁桃周囲炎(へんとうしゅういえん)や扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)を合併することがあるので、 注意が必要です
扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎) のポイント
頻度★
排膿切開が必要となる場合も
●扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)はどんな病気か?
急性扁桃炎に続発し、口蓋扁桃(こうがいへんとう)の周囲に炎症が及ぶことで起こります。30代の男性に多く発症します。扁桃に生じた炎症が扁桃被膜外に波及して扁桃周囲炎を生じ、さらに膿瘍を形成すると考えられています。
●扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)の原因はなにか
原因菌としては、急性扁桃炎の原因菌に加えて嫌気性菌(けんきせいきん)(空気を嫌う菌)が重要です。
●扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)の症状は?
急性扁桃炎に引き続いて発症し、激烈な咽頭痛が特徴です。通常は片側だけです。感染範囲が広がると耳への放散痛、開口障害が出現します。嚥下痛(えんげつう)も高度で、唾液(だえき)を飲むことができなくなり、よだれをたらします。 全身的には、高熱を伴い、経口摂取がほとんどできなくなり、全身倦怠感(けんたいかん)、脱水状態となります。
●扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎の検査と診断は)
口内を調べると、口蓋扁桃のみならず、その周囲の粘膜が強く赤く腫脹(しゅちょう)し、扁桃が口のなかに張り出しています。膿瘍部を針で刺して膿汁が吸引されれば診断できます。 しかし、必ずしも膿瘍部が穿刺(せんし)できるとは限りません。そのため、最近ではCTや超音波検査で膿瘍の場所を診断することがあります。 その他の検査は急性扁桃炎と同様です。
●扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)の治療は?
扁桃周囲炎と、それが進展した扁桃周囲膿瘍の区別が大切です。扁桃周囲炎の場合は、抗生剤を主体とした保存療法が選択されます。しかし、扁桃周囲膿瘍では、保存的治療よりも膿汁の排泄を目的にした治療が重要です。膿汁の排泄には、膿瘍の場所や程度を考慮して、注射針で穿刺吸引する場合と、局所麻酔後にメスで1~2cm程度を切開する場合があります。切開後には、十分に排膿するためにガーゼドレーンを置くことがあります。 外科処置に加えて、点滴注射により抗生剤を投与し、脱水の改善を図ります。 緊急手術に対応できる施設では、積極的に扁桃摘出術を行い、治療期間の短縮、再発予防を図ることがあります。