気胸のポイント

症状イメージ

気胸とは、2層の胸膜の間に空気がたまった状態のこと
●気胸はどんな病気か
肺の一部が破れて空気がもれ、肺が虚脱(きょだつ)した病気を自然気胸といいます。

●気胸の原因は?
肺胸膜直下に存在するブレブの破裂によって起こります。ブレブとは、直径1cm程度の異常気腔で、正常肺と異なり破裂しやすく、自然気胸の原因になります。  ブレブの破裂は、運動、怒責(どせき)、咳(せき)などで肺胞(はいほう)内圧が上昇した場合や、飛行機搭乗、ダイビングなどで大気圧が低下した場合に起こりますが、大半は安静時に発症します。  発生率は、人口10万比40~50人といわれています。好発年齢は10~20代であり、性別では圧倒的に男性に多く、背が高く、やせた人に多く発症し、患者さんの約70%は喫煙者であることが特徴です。 気胸は臓側・壁側の胸膜の破綻により胸腔に空気が貯留した状態である.原因により自然気胸(特発性気胸)と続発性気胸に分類される.  自然気胸は肺尖部や肺の末端部に発生した小さなブレブが破裂することで生じる.ほかに先行する病変がなく,痩せ型で肩幅が広く胸郭が薄い若年男性(15-25歳)に多く発生する.肺に基礎疾患があり気胸を起こす場合を続発性気胸といい,原因疾患として肺癌,肺結核,リンパ脈管筋腫症,肺ランゲルハンス細胞組織球症,子宮内膜症などがある.  外傷性気胸は気管支内視鏡検査後や人工呼吸器の加圧で生じる肺損傷(医原性気胸ともいう)や交通事故,刺し傷などの胸壁損傷の場合がある.

●気胸の症状の現れ方
突然の胸痛、乾いた咳、呼吸困難が現れます。これらの症状は安静にしていると多くは軽快してきます。しかし、高度な気胸や緊張性気胸(胸腔内にもれた空気が逃げ場を失い、心臓や反対側の肺を圧迫する気胸)では、チアノーゼ、不整脈、血圧低下なども来し、危険な状態に陥ることもあります。

●気胸の検査と診断
前期の症状で自然気胸の疑いがもたれ、胸部X線像で肺の虚脱が確認されれば(図33)、診断が確定されます。  一般的に胸部X線は、大きく息を吸い込んで(最大吸気位で)撮影しますが、軽度の気胸の場合は、大きく息を吐いて(最大呼気位で)撮影すると、肺の虚脱が増強し、診断が容易になる場合があります。 自然気胸の症状は突然の胸痛,呼吸困難,乾性咳嗽である.強い呼吸困難やチアノーゼ,頻脈などの重症症状が現れた場合は緊張性気胸や両側気胸を疑う.胸部X線正面写真で虚脱肺と胸腔内の空気を認めれば診断できる.重篤な緊張性気胸の場合は,胸部X線写真を待たずに片側の呼吸音消失の聴診のみで診断が可能である.胸部単純CT撮影は軽度の気胸の確認や肺の基礎病変の検索に有用である.

●気胸の治療は
肺の虚脱が軽度、すなわち虚脱した肺の頂上(肺尖部(はいせんぶ))が鎖骨(さこつ)の上にある場合には、安静により様子をみます。  安静にしても改善しない場合や肺の虚脱が高度であれば、持続脱気が行われます。持続脱気とは肋骨と肋骨の間から細いチューブを胸腔内に挿入し、器械で肺からもれた空気を体外に引き出す方法です。  肺が元どおりに膨張(ぼうちょう)すれば、空気のもれがないことを確認して、チューブを抜き去ります。  この時再発防止のため、テトラサイクリン、ピシバニールという薬剤や、患者さんの血液を胸腔内に注入することもあります。  しかし、持続脱気を行っても肺の再膨張が得られない場合や、再発を3回以上繰り返す場合には、手術が行われます。手術は、腋窩小開胸法(えきかしょうかいきょうほう)や胸腔鏡によって、ブレブの切除や縫縮(ほうしゅく)が行われます。  手術を行わない場合の自然気胸の再発率は、20~30%といわれています。手術後の再発率は1~2%ですので、最初から、体を傷つけることの少ない胸腔鏡による治療をすすめる医師もいます。 A.基本的治療 1.安静 初回の気胸で軽症(虚脱肺の肺尖部が鎖骨近辺まで)の場合は安静のみで回復することが多い.ただし,胸部CTまたは胸部X線写真でブレブの存在が明らかな場合は再発しやすいので初回であっても外科治療を行う. 2.胸腔穿刺・ドレーン留置 緊張性気胸では緊急の胸腔穿刺を行う.中等症以上の場合は胸腔ドレーン(8-20F)留置による持続脱気が必要である.局所麻酔下に前-中腋窩線,第4-6肋間,肋骨上縁から胸腔ドレーンを肺尖に向け挿入する.鎖骨中線からのドレーン挿入は傷跡などの美容上の理由や,大血管を穿刺する危険もあり避けるべきである.  ドレーンは基本的に水封で,緩徐に肺を膨張させる.急激な脱気は再膨張性肺水腫を引き起こすので注意が必要である.胸水や血液がある場合はフィブリンによる閉塞を防ぐために太いドレーンを用いる. 3.外科治療 胸腔ドレーンで改善しない場合や再発気胸の場合は手術が必要である.血気胸は,無症状であっても先行する気胸があり基本的には手術適応である.最近は手術侵襲が少ない胸腔鏡下手術(video assisted thoracic surgery:VATS)が一般的になってきたが,ブラやブレブが多発・広範囲の場合,癒着が高度な場合は開胸術,特に腋窩切開が選択されることが多い.VATSでの再発率は最近低下している. B.その他の治療 1.胸膜癒着術 手術適応のない高齢者,低肺機能患者には胸腔内にOK432 ⇒ (ピシバニール注,5KE程度,保険適用外),ミノマイシン ⇒ 注(100-200mg程度),自己血,フィブリン糊などを散布して癒着させることがある.胸膜に炎症を起こし胸水を貯めて肺の表面を覆うことを目的としている.OK432 ⇒ などは注入時に疼痛を伴うことがあるので事前に胸腔内にキシロカイン ⇒ を注入すると痛みの軽減がはかれる. 2.気管支塞栓術 気漏が多く手術適応がない場合には気管支鏡下に責任気管支を同定し閉塞することもある. ■患者説明のポイント ・自然気胸の手術自体は胸腔鏡下手術のよい適応で,ドレーン留置を長期間行うよりも早期に退院,社会復帰ができる. ・胸腔鏡での手術は自動縫合器を使い,合成吸収性縫合補強剤とフィブリン糊による補強を併用することで術後再発も減少してきた.

●自然気胸に気づいたら
背が高く、やせた若い喫煙者の男性が、突然の胸痛、乾いた咳、呼吸困難を感じたら、まず自然気胸を疑います。基礎疾患のある続発性気胸と異なり、予後は良好ですので、あわてずに病院を受診してください。しかし、呼吸困難が次第に増強する場合は、より高度な気胸や緊張性気胸を来している可能性があるので、早めの受診が必要です。  受診する科は内科でも外科でもかまいません。


ミドリ  海色  焦げ茶