下垂体性巨人症のポイント
下垂体に成長ホルモンを分泌する腫瘍ができる
●下垂体性巨人症はどんな病気か?
子どもで、成長ホルモンが過剰に分泌されることにより、高身長になる病気です。高身長は、定義上100人のうち2~3人は いますが、ほとんどは病気ではなく体質的なものです。下垂体性巨人症は非常にまれです。
●下垂体性巨人症の原因はなにか? 頭のなかにある下垂体という器官は成長ホルモンをはじめ、性腺(せいせん)刺激ホルモン、甲状腺(こうじょうせん)刺激ホルモン 、副腎皮質(ふくじんひしつ)刺激ホルモンなどいろいろなホルモンを分泌しています。そのなかの成長ホルモンをつくる細胞が腫 瘍化して、成長ホルモンをたくさん分泌するために発症します。
●下垂体性巨人症の症状の現れ方は?
子どもの場合は、まず成長率の増大および高身長が特徴的です。大人になってから発症すると手足が大きくなります (先端巨大症)が、子どもの場合は必ずしも明らかではありません。
腫瘍が大きくなると、視野が障害されたり、他のホル モンを分泌する細胞を圧迫して甲状腺機能低下や性腺機能低下を来す場合もあります。
成長ホルモンの過剰分泌により以下の症状が現れます。 唇が厚くなる。 額が突き出る。 下あごがせり出る。 四肢の異常な発達。 四肢以外の筋肉の収縮。 骨がもろくなる。
●下垂体性巨人症の検査と診断は?
成長ホルモンの分泌過剰、および経口ブドウ糖負荷で分泌が抑制されないこと、尿中成長ホルモンの高値、血中IGF― (インスリン様成長因子―)の高値などにより診断されます。
CTまたはMRI検査で腫瘍がみつかれば、診断は確定します。
●下垂体性巨人症の治療は?
治療の第一選択は手術で、(経蝶形骨洞的(けいちょうけいこつどうてき))下垂体腫瘍摘出術により、腫瘍を摘出します。
脳を直接開かないので安全に行える手術です。手術によって、成長ホルモンが十分に下がらない場合には、薬物療法 (ブロモクリプチンの経口投与、オクトレオチドの皮下注射)を行います。
●下垂体性巨人症に気づいたら 注意点は?
高身長は、ほとんどの場合が体質性ですが、両親が小さいのに子どもだけ大きいような場合や、極端な高身長(2mを超え そう)の場合は、かかりつけ医や内分泌専門医に相談してください。
末端肥大症、巨人症のポイント
●末端肥大症、巨人症はどんな病気か?
成長ホルモンが過剰に分泌されて引き起こされる病気です。
発育期に発症すると、身長が著しく伸びて巨人症になります。
思春期を過ぎ、骨の発育が止まってから発症すると、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示します。
●末端肥大症、巨人症の原因はなにか? 末端肥大症の大部分は、成長ホルモンを作る下垂体(かすいたい)の腫瘍によって引き起こされます。
下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンをつくっている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。
非常にまれですが、下垂体以外に成長ホルモンをつくる腫瘍が発生することもあります。
●末端肥大症、巨人症の症状は?
巨人症では急に身長が伸び、末端肥大症では手足が大きくなり、顔が変化します。
末端肥大症では普通少しずつ変化が生じるために、自分や周囲の人には気づかれないことも多いようです。
成人以降では手足が大きくなるために、靴や手袋、指輪のサイズが合わなくなります。
そのほか、頭痛、視力障害、性機能の低下、女性の場合は無月経などの症状を生じることもあります。
また、糖尿病や高 血圧症で治療中の患者さんのなかに発見されることもあります。
●末端肥大症、巨人症の検査と診断は?
診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像診断により行われます。
診断のための主症状は、手足の容積の増大、眉弓部(びきゅうぶ)の膨隆(ぼうりゅう)、鼻や口唇の肥大、下あごの突出などの特有な顔貌(がんぼう)、巨大な舌です。
検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。
血中成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、この病気ではそれが認められません。
また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。
画像検査として、X線写真で骨や軟部組織の肥厚の評価をし、MRIやCTで下垂体の腫瘍を見つけることも重要です。
●末端肥大症、巨人症の治療は?
治療は、第一に手術が考慮されます。
鼻腔から下垂体と接している骨を削り、下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。
腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。
その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。
放射線治療では効果が出るまでに数年かかり、他の下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。薬の内服は効果が限られています。
成長ホルモンを下げる注射もありますが、これまでは1日数回の注射を必要としたために、あまり実際の治療に用いられることはありませんでした。
しかし最近では持続時間が長い注射薬も開発されてきています。
●末端肥大症、巨人症に気づいたら 注意点は?
本疾患では腸のポリープ、悪性腫瘍、糖尿病、心血管系の合併症が多くみられ、そのまま放置しておくことは危険なので、早期に治療が必要です。