躁うつ病(気分障害)のポイント

症状イメージ

●躁うつ病(気分障害)とはどんな病気か
気分(心のエネルギー)が高まったり(躁病)、下がったり(うつ病)する病気です。統合失調症(とうごうしっちょうしょう)とともに、内因性(ないいんせい)精神病のなかの重要な位置を占めています。子どもの場合は10歳前後からその存在が確認されていますが、それ以前の時期についてはその存在の有無についてさえわかっていません。

●躁うつ病(気分障害)の原因は何か
統合失調症と同様に遺伝子から環境因子まで多くの因子が複雑に絡み合って発症するといわれています。原因は不明です。

●躁うつ病(気分障害)の症状の現れ方
うつ病では14~15歳以前は、頭痛、腹部不快感、食欲不振、全身の倦怠感(けんたいかん)、めまい、四肢の痛み、睡眠障害などの身体症状や、考えがまとまらない、考えたり体を動かすことが面倒などの制止と呼ばれる症状、不安・焦燥が中心になります。
“憂うつ、気分が重い”などの抑うつ気分を訴えることはまれです。しかし14~15歳以後からは以上の症状に加えて抑うつ気分を言葉にして訴えるようになります。  そのほか、多くの場合で不登校が認められます。
うつ病による不登校は、週末や夕方には元気になることが多い神経症的な不登校とは違い、一生懸命に登校した週末のほうがエネルギーを使い果たして元気がなくなるなどの特徴をもっています。
躁病では、自分が偉大な人物であると確信する誇大妄想(こだいもうそう)や爽快気分(そうかいきぶん)など大人の躁病に近い病態を示すのは14~15歳を過ぎてからであり、それまでは怒りっぽい、焦燥、注意力散漫、睡眠障害などが目立ちます。
子どもでは、うつ病と躁病の期間が数日から数週間と短いことが多く、またそれがしばしば繰り返されることが多いという特徴があります。

●躁うつ病(気分障害)の検査
うつ病では念のため甲状腺ホルモンの検査をすることが一般的ですが、心理検査は症状の経過をみて適当な時期に行います。

●躁うつ病(気分障害)の治療は
薬物療法が主になりますが、うつ病では従来の三環系の抗うつ薬に代わって、副作用がより少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるミルナシプラン(トレドミン)が第一選択薬として用いられています。
躁病では鎮静を目的に抗精神病薬が用いられます。躁とうつの予防のためにはリチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸(デパケン)などが使われます。
うつ病では薬物療法に加えて、学校を休ませて休養をとらせる、励まさないなどの配慮も必要になります。躁病では活動性が非常に強くなるので、外出や他人との接触を制限することが大切です。 リチウムは正常な気分の人には何も作用しませんが、躁うつ病の人が服用すると、約70%の人で気分の変調傾向を抑える働きをします。投与中は、血液検査で血液中のリチウム濃度を監視します。
リチウムには、ふるえ、軽い筋肉のけいれん、吐き気、嘔吐、下痢、のどの渇き、多尿、体重増加といった副作用があります。しかし、これらの副作用はたいていは一時的で、投与量の調節により副作用を抑えることができます。
リチウムの使用に伴い、にきびや乾癬(かんせん)が悪化したり、血液中の甲状腺ホルモン濃度が低下して甲状腺ホルモンの補充が必要になることがあります。
投与量を減らすことで副作用を抑えられる場合もありますが、投与を中止しなければならないこともあります。
心理療法は、主に治療の継続に役立てる目的で、気分安定薬を服用している人によく勧められます。
グループ療法は本人、配偶者、親族などに躁うつ病を理解させ、より良い形で対処できるようにするために役立ちます。
光線療法は人工の光を照射する治療で、躁うつ病の患者の中でも、特に軽度または季節性の傾向を示すうつ病(秋冬はうつ、春夏は軽躁状態になる季節性感情障害)の治療に使用されます。
ただし、あまり光の量が多いと軽躁状態に移行したり、眼を傷めることがあります。したがって、光線療法は気分障害の治療を専門とする医師の管理下で行う必要があります。