ウイルス性肺炎のポイント

かぜからウイルス性肺炎になることも
●ウイルス性肺炎はどんな病気か?
かぜ症候群から下気道に感染が起き肺に炎症が広がりウイルス性肺炎となります

●ウイルス性肺炎の原因はなにか? 肺炎の原因には、
①ウイルスそのものが肺炎を起こす場合
②ウイルスと細菌が混合感染して肺炎を起こす場合
③ウイルスが先行感染し、これに続いて細菌が二次的に肺炎を起こす場合
の3つがあります。
呼吸器に感染する代表的なウイルスには呼吸器を標的とする気道ウイルスと呼吸器以外の臓器を標的とするウイルスに大別されます。
①気道ウイルス
インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルスが重要です。また、2003年に世界を震撼(しんかん)させた新型コロナウイルスによる重症急性呼吸器(じゅうしょうきゅうせいこきゅうき)症候群(SARS、サーズ)は、日本での発症はなかったものの、今後要注意のウイルスです。
②呼吸器以外の臓器、免疫不全
感染者の免疫力低下により、全身感染症の合併症として肺炎などの肺疾患を発症します。臨床上重要なウイルスには麻疹(ましん)ウイルス、水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスがあります。

●代表的なウイルス性肺炎
①インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3型があります。  臨床上重要なのはA型とB型で、飛沫(ひまつ)感染し、1~2日後に悪寒(おかん)、頭痛とともに急激な発熱が認められ、全身の倦怠感(けんたいかん)、筋肉痛、関節痛など特有の症状を示します。経過中に肺炎を合併することがあり、とくに高齢者での死亡原因になっています。ただ新型インフルエンザの場合は必ずしも高熱を伴わない例も多く注意が必要です。インフルエンザにはイラミニダーゼ阻害薬という、吸入ドライパウダー型のザナミビル(リレンザ)と内服のオセルタミビル(タミフル)があり、A・B型両方に効果があります。新型インフルエンザに対しては大人も子供罹患者以外は免疫力がなく、新聞などでも話題にもならなくなった新型ワクチンは是非接種をおすすめします。新型は必ず再流行する可能性があり、高熱が出ないと発見と治療がおくれ重症化することもあります。
SARSウイルス(新型コロナウイルス)
感染は、飛沫感染と接触感染が考えられていますが、空気感染の可能性も完全には否定されていません。典型的な前駆(ぜんく)症状(初期症状)は38℃以上の発熱、悪寒、気分不快、食欲低下、筋肉痛で、インフルエンザ感染症に似た症状を示します。そのほかに乾性咳嗽(かんせいがいそう)(空咳(からぜき))、息切れ、頭痛、めまいなどが多くみられます。香港では70%以上の症例で水様性の下痢が認められていますが、トロントの報告では消化器症状の頻度は25%以下とされ、症状に地域差がみられます。  現時点では、SARSに対する確立された治療法はありません。二次感染や合併感染に対する薬効の範囲が広い抗菌薬投与や、呼吸管理、輸液管理など一般的な対症療法が、SARS治療の中心になっています。つまり特効薬のない恐ろしい病気です。