肝腫瘍(肝芽腫・肝細胞がん・肝血管腫・肝過誤腫)

症状イメージ

肝腫瘍(肝芽腫・肝細胞がん・肝血管腫・肝過誤腫)のポイント
良性か悪性か、また肝芽腫か肝細胞癌かの区別か大切です
●肝腫瘍はどんな病気か
肝臓に発生する腫瘍です。原発性のものと転移性のものがあり、原発性のものは肝芽腫(かんがしゅ)や肝細胞(かんさいぼう) がんのように悪性のものと、血管腫(けっかんしゅ)、過誤腫(かごしゅ)、嚢腫(のうしゅ)などの比較的良性のものがあります。  5歳未満の原発性肝悪性腫瘍(げんぱつせいかんあくせいしゅよう)のほとんどは肝芽腫で、小児の悪性腫瘍の約2%を 占めます。

●肝腫瘍の種類
良性のもの
①肝血管腫
肝血管腫は、異常な血管が集まってできている腫瘍です。そのほとんどかエコーやCTなどで偶然発見されます。この腫瘍は 治療の必要が無く、症状が出ることはまれですが、乳児では心不全などの原因となるほど大きなものが見つかることもあります
②肝細胞腺腫
肝細胞腺腫はよくみられる良性肝腫瘍で、悪性の肝腫瘍と間違われやすく、まれに破裂や出血を起こします。 肝細胞腺腫は出産可能年齢の女性に多く、特に経口避妊薬を服用している女性によくみられます。 このような腫瘍のほとんどは無症状のため、多くの場合発見されません。ごくまれに腺腫が破裂して出血を起こし、緊急手術 が必要になることがあります。経口避妊薬によって起こる肝細胞腺腫は、薬の服用をやめるとたいていは消失します。腺腫 が癌化することはきわめてまれですが、ゼロではないので定期的なエコーでの経過観察が大切です。

悪性のもの
③肝芽細胞腫
5歳未満の原発性肝悪性腫瘍(げんぱつせいかんあくせいしゅよう)のほとんどは肝芽腫で、小児の悪性腫瘍の約2%を占め ます。1歳をピークに乳幼児に発症する病気で、胎生(たいせい)早期の未熟な肝細胞から発生します。原因には、がん細 胞の成長を抑制するがん抑制遺伝子の異常や、そこに結合する蛋白質の異常などとも関係があるといわれています。
④肝細胞癌
成人型の肝細胞がんは、成熟した肝細胞ががん化したもので、10歳前後の年長児に多く発症します。

●肝腫瘍(肝芽腫・肝細胞がん・肝血管腫・肝過誤腫)の症状の現れ方
肝血管腫、肝線維腫は触れるほど大きくならないので自覚症状は皆無です。肝芽腫は乳幼児に多いことから、症状を訴 えることはまれで、腹部腫瘤(しゅりゅう)で気づく場合が少なくありません。腫瘤は、肝臓に一致した部位に表面凹凸の硬い しこりとして触れます。  進行すると発育不全や栄養障害、体重増加不良などを認めます。哺乳力の低下、不機嫌、発熱などの症状が続く 場合は注意します。転移病巣における四肢の痛み、リンパ節の腫脹(しゅちょう)、貧血などの症状が出現することもあります。

●肝腫瘍(肝芽腫・肝細胞がん・肝血管腫・肝過誤腫)の診断と検査は
肝芽腫および肝細胞がんのいずれも、血液検査でα(アルファ)―フェトプロテイン(AFP)が高値を示します。  画像診断では超音波、CT、MRIなどの検査が有用で、腫瘍の大きさや浸潤(しんじゅん)の程度を評価します。さらに血 管造影検査を行い、腫瘍に栄養を運ぶ血管を確認します。これは、手術を行ううえでも必須の検査です。  区別すべき病気には、神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)、腎芽細胞腫(じんがさいぼうしゅ)(ウィルムス腫瘍)などの 側腹部から上腹部にかけてはれてくる腫瘍があります。また、胆道拡張症(たんどうかくちょうしょう)、水腎症(すいじんしょう)、 肝腫大を伴う代謝性疾患などとの区別も必要です。超音波検査などを行い、原発部位が確認できれば区別が可能です が、肝芽腫と肝細胞がんの区別には組織学的評価が必要です。

●肝腫瘍(肝芽腫・肝細胞がん・肝血管腫・肝過誤腫)の治療は
良性腫瘍では定期的なエコーや採血などでの経過観察のみでとくに治療は必要ありません。 原発性悪性肝腫瘍は、可能なかぎり手術で切除し、その後、抗がん薬を用いた化学療法を行います。切除不能な場合 は、まず化学療法を行って腫瘍を小さくしたあと、手術を行う場合もあります。肝芽腫の大多数は、化学療法に対する感 受性があるので、適切な化学療法を行って再発を予防していくことが大切です。

●早期発見が大切です
おなかに腫瘤がふれたら、すぐかかりつけに相談することが大切です。 手術後もAFPなどを採血にてきちんと経過観察することが大事です。