過敏性腸症候群

症状イメージ

過敏性腸症候群の診断と治療のポイント
消化管全体の運動性の障害により腹痛、便秘あるいは下痢が起こる
過敏性腸症候群はどんな病気か
便秘や下痢を数カ月以上の期間にわたって繰り返している人で、便秘や下痢に際して
腹痛や腹部不快感があり、排便があると症状が落ち着く時、そして、腸の検査や血液
検査で便秘や下痢の原因になりそうな異常所見がないとき「過敏性腸症候群」と呼
びます。医師の間では、英語のirritable bowel syndrome の頭文字をとってIBSと呼
ぶことが一般的です。しばしばストレス環境のもとで起こりやすくなります。とくに、朝の
通勤通学の電車やバスのなか、人前で何かをする直前などのような時に、急にお腹
が痛くなって、急いでトイレに行きたくなるような症状が出るのが特徴的です。

消化管がさまざまな刺激に対して非常に敏感になります。ストレス、食事、薬、ホル
モン類その他のわずかな刺激が消化管の異常な収縮を起こし、通常は下痢になり
ます。下痢と下痢の間に便秘が起こることもあります。過敏性腸症候群は女性の
方が男性の3倍多く起こります。

脳は消化管を強くコントロールしています。ストレス、不安、抑うつ、恐怖、そして強
い感情は事実上何でも、下痢、便秘、その他の腸の機能に変化を起こし、また過
敏性腸症候群の症状を悪化させます。

発作が起きている間は、消化管の収縮は強まり、より頻回に起こり、食品や便が大
腸を急激に通過するので下痢が起こります。けいれん痛は大腸の強い収縮と、伸
張と圧力に対する大腸上の受容体の感受性の亢進する結果として起こります。
発作はほとんど常に目覚めているときに起こり、寝ている人が発作で目覚めること
はまれです。

高カロリー食と高脂肪食が原因となっている場合があります。小麦、乳製品、コー
ヒー、紅茶、かんきつ類で症状を悪化させることがあります。急いで食べたり、長い間
何も食べなかった後に食事をすると、過敏性腸症候群の発作が起こります。

過敏性腸症候群の症状
症状は食事がきっかけ、速く食べすぎたり、多く食べすぎたりすると起こります。食後
数分で痛みを伴って突然間に合わないほどの強い便意を伴う下痢が起こります。
便秘と下痢が交互に起こることもあります。痛みは持続する鈍痛あるいはけいれん
痛の発作として現れ、下腹部に起こります。

腹部膨満、ガス、吐き気、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如など
もみられ、排便するとしばしば痛みが和らぎます。ストレスで症状が悪化します。

過敏性腸症候群の診断
過敏性腸症候群の人はほとんど健康にみえます。ときどき大腸の上に圧痛がみられることを除けば、診察では何の異常 もみられません。医師は血液検査、便検査、S状結腸鏡検査などの複数の検査を行ってクローン病、潰瘍性大腸炎、 コラーゲン性大腸炎とリンパ球性大腸炎、そして腹痛や便通の変化を起こすさまざまな病気と、過敏性腸症候群との違 いを鑑別診断します。便が水様性であっても、これらの検査結果は通常は正常です。S状結腸鏡検査は痛みとけいれ んを起こすことがありますが、この検査結果も正常です。腹部超音波検査、腸のX線検査、大腸内視鏡検査を行うこと もあります。

過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群の治療は、人によって異なります。問題を起こす特定の食品やストレスが突き止められた場合は、 その原因を避けるようにします。過敏性腸症候群のほとんどの人、特に便秘になりがちな人は、規則的に運動することによ って正常な消化管の機能を保てるようになります。 食事は標準的なものが最善です。多くの人は、1回の量を少なめにして食事の回数を多くする方が、回数を少なくして1回 の食事でたくさん食べるよりもうまくいくようです。たとえば、1日5~6回に分けて少なめの食事を取る方が、1日3回大量に 食事をするよりよいでしょう。腹部膨満や鼓腸がある人は、豆類、キャベツ、その他の消化しにくい食品を避けるようにします。 ダイエット食品、いくつかの薬、チューインガムに使われている人工甘味料のソルビトールは大量に摂取してはいけません。 果物やベリー類、ある植物に含まれるフルクトース(果糖)は少量にとどめておくようにします。脂肪の少ない食事が効果的な 人もいます。過敏性腸症候群と乳糖不耐症の両方がある人は乳製品を摂取してはいけません。 過敏性腸症候群の人の中には、繊維質の多い食事をすると症状が改善する人もいます。調理していないふすま大 さじ1杯を十分な水分や飲みものと一緒に食事のときに毎回摂取するか、オオバコ繊維のサプリメントをコップ2杯の水 とともに取ります。しかし、食物繊維の摂取量を増やすと、腹部膨満や鼓腸などの症状が悪化する場合もあります。 消化管の機能を遅くする抗けいれん薬が処方されることがよくありますが、過敏性腸症候群ならだれにでも効果がある という保証はありません。下痢止め薬は下痢に有効です。ペパーミントオイルなどのアロマオイルは、鼓腸やけいれんなど の症状に効果があります。 情緒面の障害が原因であると確定した場合は、その障害の治療をすると過敏性腸症候群の症状も改善されます。 この治療法には、抗うつ薬、作用の軽い精神安定薬、心理療法、催眠術、行動変容法などがあります。