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要点
脳梗塞とは、脳血管の血栓、狭窄で脳血流が5分の1以下になり、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、脳組織が壊死えし(梗塞)することです。

(1)脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳卒中(最近では脳血管障害といいます)の一種で、脳動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍塊などが詰まって血流を止めてしまうため、脳細胞が壊死する病気です。
★脳梗塞と脳卒中の違い
脳卒中とは、脳梗塞を含む、(脳実質の)脳出血、くも膜下出血、脳動静脈奇形に伴う頭蓋内出血の4つのすべてを意味することばです。

(2)脳梗塞の原因
脳梗塞の原因は下の四つのものがあります。

①心原性脳塞栓症(脳梗塞の約30%)
心房細動などの不整脈や心臓弁に異常がある時心原性脳塞栓症の可能性が高く、突然発症して重症例が多い原因です。

②アテローム血栓性脳梗塞(脳梗塞の約30%)
動脈硬化の進行よる発症します。段階的に発症し糖尿病や高血圧、高脂血症、喫煙者、頸動脈エコーで狭窄があるとき好発します。

③ラクナ梗塞(脳梗塞の約30%)
ラクナ梗塞は、直径1.5cm以下の皮質下の小さな梗塞です。症状は緩徐、軽症が多く糖尿病や高血圧、高脂血症、加齢により発生率が高くなります。

④その他の原因(脳梗塞の約10%)
  病型不明や2つ以上の原因を認める場合、先天性血栓性素因、抗リン脂質抗体症候群、トルーソー症候群などを原因と認める場合などは、その他の原因として治療します。

(3)脳梗塞の検査
心原性脳血栓症の原因
 心エコー→心臓の弁膜症疾患、頸動脈病変(頸動脈超音波検査)のチェック
心電図→心房細動を含む不整脈(心電図)
アテローム血栓性脳梗塞の原因
 高血圧・糖尿病、高脂血症の動脈硬化のチェック。
高脂血症(TG、HDL-C、T-Chol)
糖尿病(血糖、HbA1c)
凝固機能(PT、APTT、D-dimer、FDP、フィブリノーゲン)
若年発症の脳梗塞例(50歳未満の発症)危険因子を認めない脳梗塞発症例
先天性血栓性素因→プロテインS C欠損症、アンチトロンビン欠損症
抗リン脂質抗体症候群、膠原病、血管炎、Trousseau症候群なども考えられます。

(4)脳梗塞の治療
発症4.5時間以内の治療のみ血栓溶解剤が使用できます
血栓溶解薬+脳保護剤(腎機能障害がない時)
急性期の血圧コントロールは緩やかに
脳梗塞急性期では、収縮期血圧>220mmHgまたは拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や、大動脈解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合に限り、降圧治療をします。血栓溶解療法は血圧を血栓溶解療法後24時間以内は、180/105mmHg以下に血圧をコントロールします

発症から4.5時間を過ると血栓溶解剤は使用できません
①脳保護薬(フリーラジカルスカベンジャー)治療:腎機能障害が無いときに
②胃潰瘍予防 H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬投与
③頭蓋内圧亢進あれば、浸透圧利尿薬の投与。

その後の治療
血栓溶解剤+非投与 Or 血栓溶解剤投与後24時間以降
アテローム血栓性脳梗塞の治療:
発症48時間以内の症例
●非経口抗トロンビン薬(アルガトロバン(スロンノンHIまたはノバスタンHI))
●トロンボキサンA2合成酵素阻害薬(オザグレル(カタクロットまたはキサンボン)
発症48時間~5日間の症例
●トロンボキサンA2合成酵素阻害薬(オザグレル(カタクロットまたはキサンボン)
●十分な輸液
●抗血小板薬 アスピリン200~300mg/日 シロスタゾール(プレタール)200mg/日またはクロピドグレル(プラビックス)75mg/日
●虚血性血管障害ハイリスク例 クロピドグレル(プラビックス)がより有効
●脳出血ハイリスク群 シロスタゾール(プレタール)がより安全
●プラビックスは、わが国で保険適用のある維持用量75mg/日で開始した場合、効果発現までに数日を要するためその間のほかの抗血小板薬の投与を併用
ラクナ梗塞の治療:
発症5日間以内の症例
●トロンボキサンA2合成酵素阻害薬(オザグレル(カタクロットまたはキサンボン)
●十分な輸液
●抗血小板薬 アスピリン200~300mg/日 シロスタゾール(プレタール)200mg/日またはクロピドグレル(プラビックス)75m
心原性脳塞栓症の治療:
発症から24時間経過後に頭部CTを撮影で出血性梗塞急性期がなければ
脳梗塞再発予防→低用量のヘパリンの持続点滴→ワルファリンの内服に移行し、PT-INRを至適範囲になるよう調整。
ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)など抗凝固薬の継続内服も。
その後の継続の治療:
①急性期に開始した、発症機序に基づく抗血小板・抗凝固薬の投与を継続する。
②降圧療法 少なくとも140/90mmHg未満に。
③禁煙 禁煙できなければ再発率は高い
④糖尿病・脂質異常症の治療、アルコール制限、再発率を低下させます。
頸動脈高度狭窄では、頸動脈内膜剥離術を行います。

(5)脳梗塞のまとめ

脳の血管が詰まったり破れたりして起こる病気を総称して脳卒中といいます。脳卒中は日本人の死因疾患の第4位で、寝たきりになる原因として最も多い疾患です。

脳梗塞は脳卒中の一つで、脳の血管が詰まる病気です。

代表的な症状は、意識障害、顔の麻痺、半身の麻痺、言語障害です。

脳梗塞では早期から適切な治療が行われるかどうかによって、治療後の経過が大きく異なります。


診断のために頭部のCT検査、MRI検査が行われます。

脳梗塞の起こり方には、心臓などから血栓(血のかたまり)が脳まで運ばれてくる場合と、脳の血管が動脈硬化を起こして狭くなる場合の2種類があり、それぞれ治療法が異なります。どのように起こったかを調べるために、頭の中以外についても心臓や頸動脈のエコー検査や不整脈の検査、血液検査などが行われます。


発症からの時間や検査結果が条件を満たしていれば、薬で血栓を溶かしたり、カテーテルを血管に通して血栓を取り除いたりする緊急治療をおこなうことがあります。

脳梗塞では、血や栄養が行き渡らなくなった部分の脳細胞が死んでしまいます。一度死んでしまった細胞は元に戻りませんが、点滴やのみ薬により、脳梗塞の拡大や再発の予防に努めることが大切です。

後遺症をできるだけ軽くするために、早期から適切なリハビリテーションが行われます。