ネフローゼ症候群

症状イメージ

ネフローゼ症候群の診断と治療のポイント
尿にたんぱくが1日に3.5g以上でる
顔もからだもむくむ病気
顔がむくむ、おしっこが泡立つ
まぶたがはれぼったくなり、そのうちに手足や顔がむくんできます。むくみのために
体重が増え、おしっこの量が減ります。尿検査をすると、タンパクがたくさん出て
います。おしっこが泡立つのも特徴。体がだるく、食欲もありません。
タンパク尿はアルブミンという成分が主成分です。アルブミンは血管のなかの水
分を維持し、さまざまな物質と結合して運搬する役割をもっています。このアル
ブミンが大量に失われるために血管のなかに水をひきつけることができなくなり、
血管から水分が漏れて足や顔、腕にむくみがおこります。ひどくなるとおなかや
胸まで水分がたまることもあります。

尿といっしょにタンパク質が出でます
腎臓の糸球体の障害
腎臓の中にある糸球体は、血液中の老廃物や余分な水分をこして、尿を作
るはたらきをしています。ネフローゼになると、この糸球体が障害を起こし、タン
パク質が尿といっしょに出ていってしまうのです。その結果、血液中のタンパク質
が不足して、むくんだり、おしっこの量が減るなどのさまざまな障害が起こります。
ネフローゼ症候群になると高脂血症を起こしたり、血管が詰まる血栓症という
病気を合併したりすることがあります。また、感染症にもかかりやすくなります。
そのため、入院をして治療を受けることが必要になります。

ネフローゼ症候群の種類と特徴
微小変化群
3 ~7歳の子供に多く、大人でも約30%にみられます。数日~一週間
くらいで急激なむくみ、たんぱく尿、低アルブミン血症、高血圧がみられます。
ステロイドの反応がよく、むくみや腹水、胸水にはアルブミン製剤や利尿薬で
改善します。再発率が高いので注意が必要です。

膜性腎症
大人のネフローゼ症候群で最も多い。糸球体の上皮細胞の下に免疫複合
体が沈着して引き起こさせる。血液の凝固が亢進するので、血栓症、とくに
腎静脈血栓症の合併に注意が必要。自然寛解することおあるが、突然再発
することもある。治療は通常のネフローゼ症候群の治療が行われる。進行は
ゆっくりで腎不全に 10年で10% 20年で40%

巣状糸球体硬化症
糸球体の一部が硬くなる。1日20gをこえる尿たんぱくがみられ、肉眼ではみえ
ない血尿がみられます。低たんぱく血症、低アルブミン血症を引き起こすため、
むくみや腹水、胸水がみられる。腹部膨満感や陰嚢水腫などで下腹部に違
和感がおこることもある。高血圧も合併しやすいので注意が必要。ステロイド薬
はあまり効果がない。コレステロールを下げる治療(LDL吸着療法:LDLコレステ
ロールを血漿から取り除く)も必要になる。なかなか完治せず、半数以上の人
が発症から5~10年で腎不全に移行する。

膜性増殖性糸球体腎炎
免疫複合体によって起こされるものと、自己免疫疾患の病態のひとつとして起
こるものの2種類ある。発生頻度は少ないものの、有効な治療薬が少ない。ほ
んどは慢性腎炎に至る

びまん性増殖性糸球体腎炎 
自覚症状がすくなく、検尿ではじめてきづくことがほとんどだが、むくみや蛋白尿
によって気づくこともある。10年~20年と根気よく治療していくことが必要。自
覚症状が少ないが定期的に検査をして腎機能を低下させないようにすることが
必要。

二次性ネフローゼ症候群(続発性)
腎臓病以外にものが原因で起こる。
糖尿病腎症、ループス腎炎などから発症する

治療はステロイドの内服です
病院では、ステロイドホルモンなどで治療します。再発率が高いため、くり返し
ステロイド剤を使う結果になることもあります。長期になると、この薬の副作用で
顔が丸く太ってくる(ムーンフェイス)など、いろいろな症状が出ることがあります。
免疫抑制剤と免疫グロブリンが使われることも

食事制限がとても大切な病気です
安静にして、塩分・タンパク質を制限
ステロイド剤がよく効くタイプのネフローゼ症候群では、むくみ(浮腫)のある間だ
け塩分制限が必要です。一方、ネフロ-ゼ症候群が持続する難治性の場合
は、むくみ(浮腫)や高血圧の予防の目的からも、塩分制限(5g/日)を続け
る必要があります。
従来、尿にもれる蛋白質を補充するという観点から、高蛋白食が良いとされて
きました。しかし、必ずしも蛋白質をたくさん食べたからと言って、低蛋白血症が
改善する訳では有りません。逆に、高蛋白食によって腎臓に負担がかかって、
かえって尿蛋白が増加することから、一般には体重kg当り0.8g、プラス尿蛋白
量(例えば標準体重が60kgで、5gの蛋白尿の場合は 60 x 0.8 + 5 = 53g)
程度が妥当と考えられています。後で述べるように慢性腎不全を合併している
場合には、もう少し蛋白制限が必要となります。
ネフロ-ゼ症候群が長く続き、ステロイド剤を長期間服用している場合には、
安静を強いられることもあって、肥満傾向になることが多いのですが、これは、
ステロイド剤の副作用を招くだけでなく、効き目も悪くなります。一般に、薬は
体重当りで作用しますから、体重が2倍になれば、効き目は半分になり、薬を
増量することが必要になります。
療期間中にかぜをひくと、再発することが・・・。かぜの予防を心がけ、医師の指
示を守って、徐々に薬を減らし、病気を克服していきます。