心房細動
頻度★★★★
要点
持続性不整脈のなかでもっと多く、心房が1分間に400回以上の頻度で不規則に興奮し、その興奮波が房室結節伝わるために、心室興奮が不規則になる不整脈

(1)心房細動とは

心房細動(AF)は最も多い持続性不整脈で,その頻度は全人口の2%で、加齢により頻度が上昇、80歳以上では10%を超えるます。原因除去や自然に正常に戻る一過性、発作性心房細動、自然ではもどらないが電気ショックあるいは抗不整脈薬でもどる持続性心房細動、それらの治療でももどらない永続性心房細動とに分けられます。心房細動の70%は心臓弁膜症・心筋症・虚血性心疾患・高血圧、甲状腺機能亢進などの合併症があり、ないものはわずか30%です。
心房細動の診断は心電図により可能で、毎分400回以上の高頻度の不規則な心房興奮(f波)がみられ,心室興奮は全く不規則に出現します。

(2)心房細動のポイント

心房が細動状態(400回/分以上で興奮)となることで、細かく震えているだけの状態になる。心房内(特に左心耳)に血栓を生じることがあり、それに起因した脳梗塞をいかに防ぐかがポイントとなります。心房細動は進行性疾患でときどき発生するが自然停止するものから始まり、頻度の上昇とともに持続時間が長くなっていきます。そして持続性心房細動(1週間以上持続し、停止のために薬物や電気的除細動を要する)・さらに除細動でももどらず心房細動で固定した(1年以上持続)、慢性心房細動となります。
ときどき生じる状況からなりっぱなしの状態へと進行し、進行するに従って治療は困難になっていきます。基礎疾患として甲状腺機能亢進症、高血圧(心不全合併例)、弁膜症、洞不全症候群、WPW症候群、心不全、心筋症があります。胸部X線、心電図、24時間心電図、心エコー(心臓内血栓がないか、弁膜症がないか、心不全がないか)、血液検査(一般検査に加え甲状腺などのホルモン検査  BNPなどの心負荷の検査)などを行います。
a)全く不規則な心拍・房室弁逆流による,動悸・胸部不快などの出現
b)不規則な心拍・房室弁逆流・心房-心室同期収縮の消失,過度の徐脈や頻脈による心拍出量の低下
c)持続性頻拍を原因とする頻脈原性心筋症・左心機能低下
d)心房の機械的リモデリングの進行とともに左心耳内血栓形成
e)心原性脳梗塞(重症例が多く,致命率も高い)・動脈血栓塞栓症の発症(リウマチ性弁膜症例のAFで18倍,孤立性AFで6倍)
f)基礎の心血管系病変や脳梗塞による2倍の死亡率
g)認知症の早期発症との関連性に関する最近の報告

(3)心房細動の治療

心房細動の治療は血栓と心不全の予防、心拍数の調節が中心となります。
塞栓症リスクスコア(CHADS2スコア)により2点以上が抗凝固剤投与が必要となります。
心不全がある 1点  高血圧がある 1点 年齢75歳以上 1点 糖尿病 1点 脳梗塞・一過性脳虚血発作 2点

脳卒中リスクは1年以内に発症する確率 1点2.8%  2点4% 3点5.9% 4点8.5%  5点12.5%  6点18.2%

心不全イベント発生(心不全入院または死亡)を予測するスコアとしてH2ARDDスコアがあります。
(H=器質的心疾患 2点、A=貧血 1点、R=腎機能障害[eGFR<60] 1点、D=糖尿病 1点、D=利尿薬使用 1点)。
H2ARDD 3点以上は中等度以上の心不全入院リスクを有すると考えられ、きちんと治療が必要となります。

抗凝固薬治療
脳梗塞を予防する目的で、脳梗塞の発症リスクを評価し抗凝固薬を服用します。CHADS2スコア2点以上(高リスク)では、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、ワルファリン、による抗凝固療法が必要です。1点(中等度リスク)でも新規経口抗凝固薬を投与することが増えています。エビデンスがあるダビガトラン・アピキサバンの推奨度が高くなっている(推奨度1)。
ワルファリンはPT-INRを指標として用量調整を行います。70歳以上ではPT-INR 1.6-2.6、70歳未満ではPT-INR 2.0-3.0が目標治療域である。(推奨度 1)

主な症状は、不規則な脈です。多くの場合、頻脈になります。メインのポンプである心室に血液が十分に送り込めなくなるため、心不全を起こしやすくなったり、心房の中に血栓ができて脳梗塞を起こしやすくなったりします。

心臓にできた血栓が脳に運ばれ脳梗塞症を発症すると、死に至ることが多く、生命をとりとめたとしても重度の後遺症が残りやすいです。そのため心房細動の診療は、血栓症予防のために抗凝固療法を適切に行われることが優先されます。

弁膜症、心筋症、甲状腺機能亢進症、高血圧症などが背景にあって発症することがあります。これらの検査をし、必要に応じて治療が行われます。

高齢になるほど発症しやすいことがわかっています。特に心臓の病気がなくても90歳まで生きれば4人に1人の割合で発症するとのデータがあります。日本成人の健診データでは、心房細動の罹患率は約0.5%で、2050年には1%を超えると推測されています。心房細動はけっして特別な人だけが罹患する病気ではなくなりつつあります。「おそろしい病気にかかってしまった」と深刻に思わずに、「心臓の老化現象だからうまく付き合っていこう」と考えるとよいでしょう。

心房細動は、心房という心臓のサブポンプが高頻度に震える不整脈をいいます。

心房細動は、脳梗塞の予防がきちんとできていれば、不整脈が持続したからといって基本的に生命にかかわることはありません。過剰に心配しないようにしましょう。

症状がつらいときには遠慮なく病院に連絡し、医師の指示を仰いでください。

心房細動は必ずしも、抗不整脈薬を飲めば抑え込めるというタイプの不整脈ではありません。むしろ高血圧症、糖尿病などの生活習慣病や、飲酒、喫煙、ストレスといった生活スタイルと密接に関連しています。血圧や血糖をしっかりとコントロールするとともに、生活全般を見直すことが重要です。

普段の生活で気をつけてほしいこと

  • 高血圧症、糖尿病、心不全、75歳以上のある患者さんは医師にきちんと処方された薬を継続する。
  • 塞栓症のリスクがあると診断された場合は、きちんと薬を飲み忘れなく継続、水分を十分に摂取しましょう。ただし、心不全を併発している場合は、水分量に気をつけてください。

  • 過度な精神的ストレスと不眠に注意しましょう。
  • 過度な飲酒、喫煙は避けましょう。

心房細動(不整脈)の出現頻度や持続時間をなるべく記録し、普段の外来のときに医師に提示しましょう。