心房粗動
頻度★
要点
持続性不整脈のなかでもっと多く、心房が1分間に300回以上の頻度で規則的に興奮し、その興奮波が右心房の中で、三尖弁輪という右心房と右心室の連結部分の周りを電気信号が回っている状態 そのために、心室興奮が規則的になる不整脈

(1)心房細動とは
 心房粗動は心房の規則正しく速い興奮を特徴とする上室性頻拍の1種です。通常型心房粗動においては1分間に約280回、三尖弁輪という右心房と右心室の連結部分を旋回して伝導します。心房粗動はよく心房細動を合併します。房室伝導比が4:1以下と低い場合には脈拍は70回/分となり症状は軽度です。2:1伝導では心室拍数が140/分程度となり、動悸症状を引き起こすことが多く、他の上室性頻拍との鑑別を要する。

(2)心房粗動のポイント
 心房粗動は通常心電図で診断がつきますが室に伝わる数が多い(2:1房室伝導で粗動波の確認が難しければ)、ベラパミルという薬を使って心室に伝わる数を減らして心房の波の形をみやすくします。

(3)心房粗動の治療

①頻拍となっている場合の処置

心室へ伝わる数が多く、頻脈となっている場合にはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬といった心室に伝わる信号の数を減らす薬を使います。心室に伝わる信号の数が減ると、心房は心房粗動のままでも動悸症状は軽くなります。

点滴の薬を使って心房粗動を停止させるのは難しいことが多く、また抗不整脈薬を使うことで返って症状が重くなることもあります。

症状が強く、特に肺に水がたまって呼吸困難を伴っているような場合には、β遮断薬やカルシウム拮抗薬といった少し心臓の力を弱める作用がある薬は使わずに、電気ショック治療で心房粗動を止めることになります。

②心房粗動の予防、根治

現在、心房粗動の予防効果が高い薬はなく発作性上室性頻拍とは異なりなかなか自然にもどりません。三尖弁輪の周りを興奮が大きく回る典型的な心房粗動では、電極カテーテルを使った刺激を切断する手術(カテーテルアブレーション)の成功率が高く、危険性も少ないためよく行われます。約90%程度で治療効果があり、症状の再発は10%程度です。三尖弁輪以外のところを回る心房粗動では、コンピュータを用いた特別な装置を用いて診断をする必要があります。正確な診断が付けば多くの場合はカテーテルアブレーションによる治療が有効です。

③血栓の予防

心房粗動は、心房が規則正しいものの異常に速く拍動する不整脈の一つです。心房粗動でも心房細動に準じた抗凝固療法を行います。

半数に高血圧や弁膜症が認められ、多くの人が心房細動という別の不整脈を発症しています。

無症状の人もいますが、多くの場合は長時間の動悸がみられ、時には心不全を起こすことがあります。また心房の中に血栓ができやすく、脳梗塞を合併することもあります。

診断のためには、心房粗動が出ているときに心電図をとる必要があります。心電図による診断をやりやすいように、脈を遅くする薬を使用することもあります。

X線検査や採血などの一般検査のほか、心臓の動きを正確に測り、心臓の中の弁の病気(心臓弁膜症など)を捉える心エコーなどの検査も行われます。

心房粗動に伴う動悸が生じたとき、動悸を軽減するための薬剤を点滴し、その後、内服薬で調整します。

動悸が長時間にわたって止まらないときは、それを止めるために電気ショック治療を行い、再発を薬で予防します。

十分な効果が得られない場合は、カテーテルを使った高周波カテーテル・アブレーション治療を行います。合併症が少ないのでカテーテル治療は第一選択の治療となります。

 

 

普段の生活で気をつけてほしいこと

  • 高血圧症、糖尿病、心不全、75歳以上のある患者さんは医師にきちんと処方された薬を継続する。
  • 塞栓症のリスクがあると診断された場合は、きちんと薬を飲み忘れなく継続、水分を十分に摂取しましょう。ただし、心不全を併発している場合は、水分量に気をつけてください。

  • 過度な精神的ストレスと不眠に注意しましょう。
  • 過度な飲酒、喫煙は避けましょう。