原発性副甲状腺機能亢進症
頻度★
要点
原発性(げんぱつせい)副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺が腫大(しゅだい)して副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されることにより、高カルシウム血症、低リン血症、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、尿路結石(にょうろけっせき)、腎障害などを来す病気です。

(1)原発性副甲状腺機能亢進症とは
 副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺ホルモン(PTH)の慢性的分泌過剰状態により生じます。このうち、副甲状腺に発生した腺腫や過形成あるいは癌からPTHが自律的かつ過剰に分泌され高Ca血症を来したものが、原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT)です。8割以上は良性の腺腫で、この場合は4つある副甲状腺のうちひとつが腫大します。PTHの働きはCa再吸収促進とHCO3再吸収抑制でアシドーシスにする作用があります。
過形成は4つの副甲状腺のすべてが異常になるもので、多発性内分泌腺腫症(たはつせいないぶんぴつせんしゅしょう)(MEN)I型という遺伝的な病気に合併して起こることがほとんどです。この場合副甲状腺過形成とともに膵臓、下垂体甲状腺などにも異常がみられます。診断されていない事が多く、 腎結石症・尿管結石症 や 骨粗鬆症 を認めた場合は、かならず血清Ca値の測定が必要です。また尿中のCaも増え腎結石・腎障害の原因となります。

(2)はっきりした症状がでにくいのがのポイント
 副甲状腺機能亢進症の症状は、高Ca血症による症状が主です。倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、吐き気、多尿、口の渇きなどがみられます。カルシウム濃度の上昇が軽度(11〜12mgdl以下)の時にはほとんど自覚症状が認められません。
しかしながらまれに、急速に病気が進行して高度のカルシウム血症(15mgdl以上)を来すと、意識障害などを伴い、激しい消化器症状、循環器症状、中枢神経症状、尿素窒素上昇、乏尿など生命に関わる状態(高カルシウムクリーゼ)になり、緊急を要することもあります。
症状に乏しい場合でも、副甲状腺機能亢進症が長い間続くと、PTHが骨の吸収を促進するために骨粗鬆症になったり、腎臓へのカルシウムの負荷が高まるために尿路結石や腎障害を生じることがあります。また、この病気には胃潰瘍(いかいよう)、膵炎(すいえん)、高血圧などの合併もみられます。

(3)原発性副甲状腺機能亢進症の治療
 高度のカルシウム血症のときには輸液、利尿剤を、また慢性例には骨粗鬆症の治療を行います。根治のためには病的な副甲状腺の摘出手術が必要です

(4)高カルシウム血症の鑑別診断
 血中高カルシウム血症があったら 高カルシウム血症の90%が原発性副甲状腺機能亢進症か悪性腫瘍 血清アルブミンが4以下の時には補正が必要です。
→家族歴 原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT)
多発性内分泌線種Ⅰ型(MEN Ⅰ型)
家族性低カルシウム尿性副甲状腺機能亢進症(FHH) など副甲状腺の病気の家族がいないか
薬剤の服用 活性化ビタミンD3(骨粗鬆症の薬)、サプリメントのビタミンD、サイアザイド性利尿薬、テオフィリン(喘息の薬)、
リチウム(リウマチの薬)の服用を確認する。 副甲状腺ホルモンPTHはテオフィリン・リチウム以外は低値なので低値とならないときには原発性副甲状腺機能亢進症の合併も考慮します。
尿中Ca排泄  24時間塩酸二分蓄尿下でのCaクリアランスとCrクリアランスの比(CCa/CCr)が0.01未満なら
血中PTH 正常~高値 高マグネシウム血症 カルシウム感知受容体異常
家族性低カルシウム尿性副甲状腺機能亢進症(FHH)
=家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症
  ★血中PTH測定 正常上限~高値 原発性副甲状腺機能亢進症
正常下限~低値 悪性腫瘍検索
◎あり 血中PTHrP高値 →PTHrP産生腫瘍 扁平上皮癌 成人T細胞白血病(ATL)
PTHrPはPTH-related proteinの略でPTHとの違いは腎臓でのHCO3の再吸収抑制が弱いつまり再吸収されやすい アルカリになりやすい
◎あり 血中PTHrP正常 腫瘍の骨浸潤・骨転移
★血中PTH測定 正常下限~低値 悪性腫瘍検索 悪性腫瘍なし
血中1,25-(OH)2ビタミンD測定 高値 慢性肉芽腫症
正常~低値 甲状腺機能亢進症 副甲状腺機能低下症

甲状腺の裏側にある副甲状腺が大きくなって大量の副甲状腺ホルモンを分泌し、カルシウム代謝の異常をきたす病気です。

副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを溶かし血液中のカルシウム値を高くするはたらきをしています。副甲状腺ホルモンが大量に分泌されることによって血中のカルシウム値がより高くなるのです。

カルシウム値が高くなるために、食欲の低下、吐き気、腹痛、のどの渇き、尿の回数が増えるなどの症状がみられます。重症の場合は、不整脈や腎臓の障害をきたすこともあります。

病気は血液や尿の検査から診断されます。病気が疑われたら、甲状腺エコー検査、CT検査により副甲状腺の大きさなどを調べます。また、尿路結石や骨粗しょう症を生じることがあるので、腹部エコーやCT検査で結石がないかを調べたり、骨密度検査で骨の状態を調べたりします。