熱中症
要点
熱中症は、多湿で暑いところにいたり、運動して体の中に熱がたまったときにかかる病気です。重症例・熱射病となると命に関わる病気です

(1)熱中症とは

症状・重症度により分類されます。水分のとれないとき、意識がはっきりせずまっすぐ歩けないときは重症です

熱失神 めまい 一時的な失神 顔面蒼白
皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少して起こります。
脈は速くて弱くなります。
めまいや立ちくらみ、顔がほてるなどの症状が出たら、熱中症のサインです。
一時的に意識が遠のいたり、腹痛などの症状が出る場合もあります。

熱けいれん 筋肉痛 筋肉がけいれんする 手足がつる
大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下した時に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんが起こります。「こむら返り」と呼ばれる、手足の筋肉がつるなどの症状が出る場合があります。筋肉がピクピクとけいれんしたり、硬くなることもあります。マラソン完走後などによくみられます。熱けいれんはその後も周期的に再発するため病院で漢方の芍薬甘草湯、市販薬ではこれを錠剤にしたコムレケアなどがよく効きます。ただ攣りやすいと長期に飲むとき、利尿薬などを飲んでいるときには低カリウム血症が起こることもあるので、バナナと一緒がおすすめです。エルカルチニンという処方薬も効果があります。ランニングやトライアスロンの補給食で梅干しとバナナは実はとても理にかなっているのです。足を高くします。

熱疲労 全身倦怠感 悪心・嘔吐 頭痛 集中力や判断力の低下
大量に汗をかき、水分の補給が追いつかないと、身体が脱水状態になり熱疲労の症状 体がぐったりし、力が入らない。吐き気やおう吐、頭痛などがみられます。体温がやや高めで顔面はやや蒼白のこともあります。自分で上手に水分補給ができないときには危険ですので一刻も早く医療機関に行くべきです。

熱射病 体温が高い 意識障害 呼びかけの反応がにぶい 言動が不自然 ふらつく
汗はかかず、顔などが赤く熱っぽく、体温も39℃を超える高熱を発していることが多くあります。来院時には平熱になっていても直腸温では40度をこえることもあります。めまいや吐き気、頭痛のほかにも意識障害、昏睡、全身けいれんなどが起きると極めて危険な状態です。最悪の場合死に至る危険もありますので、すぐに救急車の手配が必要となります。声をかけても反応しなかったり、おかしな返答をする。または、体がガクガクとひきつけを起こしたり、まっすぐ歩けないなどの異常があるときは、重度の熱中症にかかっています。すぐ救急車にて医療機関に搬送しましょう。命にもかかわるきわめて重症度が高い状態です。

熱中症は一度なると再発率が高いので軽症のもので48時間 熱射病となれば7日間は運動を避けるべきです。

熱中症の異なる分類
古典的熱射病と運動性熱射病の違いを認識しておくことが必要です。
古典的熱射病は、高齢者が数日かけて熱波などにやられてじわじわと高体温になります。
自宅でも高温多湿の環境に長時間いると古典的熱射病を起こします。1日に数時間でもクーラーをつけて体を冷やし、水分や食事を積極的にとるようにしましょう。古典的熱射病では脱水が軽度のこともあるので運動性熱射病のようにむやみに急速輸液は避け慎重に輸液します。皮膚は乾燥して汗をかかないことがあります。気化熱でゆっくりと体温を下げる。発熱に対しては感染症などにもチエックが必要です。古典的熱射病の方が基礎疾患と高体温の時間が長く入院が必要となることもあります。毎日外出しない、生活が自立しない、社会的コンタクトがないことはリスクです。自宅のクーラーをつけて活動的に生活することで防ぐことができます。

運動性熱射病は若年者が運動時に短時間で熱射病になる。
運動性熱射病は、現場で冷たい水に浸すことで一番早く冷やせるがと欧米ではいわれていますが、日本ではぬるま湯をかけて風で解熱することが一般的です。首筋や脇の下を氷で冷やすのもよいでしょう。

(2)熱射病は重症
体温調節機構の破綻から異常な高体温となり、臓器障害がもたらされます。この状態はすぐに救急車を呼ぶ必要のある命に関わる病状です。高度な脱水に伴う循環不全も臓器障害の原因ともなります。意識障害、小脳症状、けいれんなどの中枢神経症状が生じることがあり、頭部CT検査を行います。
肝腎機能障害を来すことがあり、肝腎機能のチェック、横紋筋融解に伴うCK上昇、電解質異常を伴うこともあるので検査を行います。

■犬や猫の熱中症もあります
初期症状として激しい呼吸と大量のよだれが見られるます
目の充血や、耳の内側と口の粘膜の赤味が強くなるのもよく見られる症状とのことです。中期の症状になると脈拍が速くなり、下痢や嘔吐(おうと)をする場合もあります。症状がさらに進行すると、血液の循環が悪化して酸欠状態になってしまうそうです。
換気(かんき)の悪い場所や飲み水の不足、炎天下の中での飼い主による強引な散歩などが熱中症の原因となります。犬は人間と違って汗ではなく呼吸によって体温調整をしています。シャンプーするときあまりにも熱いお湯をかけ続けているのも危険
熱中症にかかった時の対応はホースで水を体にかける、喉に冷たいタオルやアイスノンをあてて頸動脈(けいどうみゃく)を冷やす
•扇風機の前などで風をあてて体全体を冷やすなどです

(2)スポーツ指導者としての熱中症対策
熱中症はグループ指導者が100%防ぐことのできるものです。
運動させる前準備が大切です
①熱中症警告計を用意する 1000円前後で携帯用が購入できます。運動開始する前の環境リスクを評価してスポーツメニューを考えます。まずスポーツをさせる前に環境リスクをチエックします。気温・湿度と熱中症指数から運動させる前の環境がどの程度リスクがあるかを考慮します。気温が高いと強度の高い運動は体温を上昇させるだけでなく、筋肉ダメージものこります。スマホアプリで熱中症予防のものもあるので野外の時には使えます。体育館内などの時にはやはり野外と状況が違うので熱中症警告計は有効でしょう。
②クッキングタイマー できればインターバルラウンドタイマーを用意する 時間ごとに飲ませる量と休憩時間をチェックします。タイマーはスマートフォンのアプリで十分です。インターネットで検索すればいろんな種類のものがあります。無料のものも多数、是非利用して下さい。
③運動前に水分と軽食を取らせる 空腹での運動をさせない 運動前2時間ぜんごに500mlの水分をとらせます。
④運動対象者の年齢・運動歴・体調をチエック
睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあります。高血圧、肥満、甲状腺疾患、薬剤服用の有無をチェックします。熱中症の危険因子は65歳異常または15歳未満、認知機能障害・精神疾患、心疾患および肺疾患、身体障害・運動障害などです。ケースによっては年齢別、運動能力別のクラス分けが必要でしょう。オーバートレーニングは熱中症のリスクを高くします。
⑤クーラーボックスに熱中症対策のものを用意を
かち割り氷、スポーツドリンク、梅干し、バナナ、アイスノンなどを用意、ボトルもできれば飲水量がチェックできるものがよいでしょう。

運動中の発汗は0.5~2.5l/時にものぼり、口渇に頼った水分補給では不足します。発汗量は天候、気温、湿度、風速、服装、運動強度、運動時間、本人の運動能力によります。
運動の2~3時間前に500~600mLの水分を補給して、運動の10~20分前に200~300mLの水分を補給するとかなり熱中症を防ぐことができます。
典型的には10~20分おきに200~300mLの水分補給を必要とすることが多く薄めのスポーツ飲料が適しています。運動前後のコーヒーはリスクをあげるので控えましょう。

脱水症・熱中症・熱射病を予防するには
水分と塩分の不足が原因
気温とともに体温も上昇、発汗によって体温を下げます。汗には、塩分も含まれており脱水症に。脱水症を放っておくと、熱中症、熱射病へと症状が移行していきます。

熱中症は炎天下だけではない
熱中症は炎天下特有のものではなく、湿気の多い時期や曇りの日、日中だけでなく夜間、屋内でも起こる可能性があります。冬場でも極端な厚着で激しい運動したり、温度が高い、湿度が高い、日差しがきつい、風がない、急に暑くなったなど、体内の熱を体外にうまく放出できず体を冷やせない状況にあるときは、注意が必要です。

カリウムが不足すると細胞内が脱水症状に
汗をかくことでカリウムも失われています。カリウムは細胞内液に多く含まれており、細胞内が脱水症状に。細胞内脱水は熱中症になってしまった際の回復に影響を与えます。ナトリウムを排出する働きのあるカリウムですが、汗をかいた時は実は意識して摂りたい栄養素のひとつなのです。バナナが一般的ですが海草類や果物、豆類などに多く含まれています。

治療法とセルフケア
涼しい環境と冷却がポイント
室内では無理はせず、扇風機やクーラーを積極的に活用し、適度な気温、湿度を保ちましょう。暑い日など外出先などで体調に異常を感じたら、風通しのよい日陰や、クーラーが効いている室内へ移動します。きついベルトやネクタイはゆるめ風通しを良くし、体からの熱の放散を助けます。皮膚に水をかけ、うちわや扇風機などであおぎ、体を冷やすのも方法の一つです。いかに早く体温を下げることができるかが悪化させないポイントです。海外では冷たい風呂に入るなどの治療も紹介されいます。

水だけでなく塩分も補給
水分とともに塩分の補給も行いましょう。水分と塩分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液、塩や梅干し(ナトリウム補給)などを足して塩分も補給しましょう。熱中症に併発するこむら返り、筋けいれんなどはバナナ(カリウム補給)や納豆(Mg補給)緑茶やウーロン茶に含まれるカフェインは利尿作用があるため要注意です。吐き気や水分摂取、食事がとれないときには早期に病院受診される方が安全で早期回復が見込めます。

健康状況を毎日チェック
風邪気味などの症状がないか?風邪薬をのんでいないか?
副鼻腔炎・慢性鼻炎も要注意です。鼻づまりで就寝中に口呼吸することが多いと、体の水分の蒸発量が増えます。発熱、下痢、嘔吐なども体内の水分や塩分が失われやすいので運動を控え、熱中症に気をつけましょう。また風邪薬に入っている抗ヒスタミン剤も熱中症のリスクとなります。風邪薬をのみながら無理矢理試合などは熱中症のリスクがもっとも高くなる行為です。
寝不足・睡眠不足はハイリスク?
睡眠が不足していると、体温コントロールも難しくなります。特に前夜が熱帯夜で睡眠不足だと、就寝中の発汗量も多くなるので翌朝は十分な水分補給に注意しましょう。また睡眠薬も熱中症のリスクとなります。
前日・当日の飲酒とコーヒーはハイリスク?
飲酒は、アルコールの分解に水分を使うことに加え利尿作用もあり、翌日も普段より脱水状態になっています。またコーヒーの中のカフェインも熱中症のりすくとなります。
朝食を食べ十分水分をとる?
朝食を摂ることで、水分だけでなく塩分も補給することができ、体温を下げる効果のある汗も出やすくなります。運動前2~3時間前に500mlの水分をとるだけで熱中症をかなり防ぐことができます。夏バテで食欲がないことが多い時期ですが、意識して朝食を摂るようにしましょう

熱中症になりにくい体作りを
暑熱順化といって暑いところでも運動できる体作りが行えます。10~14日ほどかけてその間は強度の強いトレーニングは避けゆっくりと体を慣らしていきます。気温が急にあがったシーズン始めも同様の暑熱順化の期間を設けることで熱中症を防止できます。暑熱順化がすすむと塩分の多いべたっとした汗が塩分の少ないさらっとしたものになり体温の上がり始め早期から沢山の汗が出るようになり寝暑熱下でも運動パフォーマンスの落ちにくい体に順応してきます。短い時間から汗をかく運動を1日数回行うことから始めます。強度と時間が長ければ順化もはやく、僕自身も真夏の皆生トライアスロン 気温30度を超えるなかでの鉄人レース約12時間耐える体作りのため二ヶ月前からこの暑熱順化トレーニングを毎日行います。また暑熱順化はトレーニングを少しでも毎日行わなければ休止すると速やかにもとに戻ることも知られています。